本研究では、訪問介護における適時的な支援介入やその程度、住宅改修や住み替えを快適に行うにはどうすればよいかを明らかにするため、軽度認知障害を含む高齢者の居住環境の三次元スキャナを用いた住環境センシングシステムの開発と、それによる自立生活の可否判断と介護支援の必要性の判断、自立生活環境と認知・身体能力・生活状況の関係の解明、人間-環境間における生理・心理・環境計測に基づく安全や快適、環境負荷に関連する「自宅感」評価指標の提案など、要素の研究を行いつつ、超高齢社会における住環境全体のあり方をまとめることを目的とする。 本年度は、開発指標および認知機能測定デバイスについては実験のデータ分析を踏まえたさらなる検討と、自立活動を促す工夫、住宅改修、住み替えの指針の提案について検討を実施した。 具体的には、認知機能測定デバイスにおいては、改良ポイントを基に作成した最終版アプリケーションを継続的に導入し、継続的なツール使用における課題の抽出及び有効性の検証を行った。その結果、ツールの継続的使用が高齢者の認知機能及びQOL の維持に寄与する可能性が示唆された。一方、在宅や施設での自立活動を促す工夫の一つとして、認知症高齢者の手すり把持に必要なリーチ動作を促すデバイスの開発を行った。開発したデバイスは、トイレでの移乗場面において、音声と光により行動を促し、自律的なリーチ動作を誘発し、把持を検知することによって次の動作を促す機能を有するシステムで、約5名に対して施設での機能評価を実施した。また、これまでの居住空間のセンシングシステムの開発の結果をもとに、住宅改修や住み替えに関するの議論を行った。
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