研究課題/領域番号 |
15KT0004
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
山岸 暁美 浜松医科大学, 医学部, 助教 (30433626)
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研究分担者 |
森田 達也 聖隷クリストファー大学, 看護学研究科, その他(移行) (70513000)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 救急医療 / 在宅医療・看護 / 地域包括ケアシステム / アドバンスケアプラニング / 意思決定支援 |
研究実績の概要 |
介入前調査として、M市在住の25歳以上79才以下の市民のうち、無作為抽出された2250名の市民を対象に郵送質問紙調査を実施し、1207人(回収率54%)から回答を得た。 Advance Care Planning(ACP)について、自身で考えたことがあるという回答は69%、家族や親しい人と話をしたことがあるという回答は53%であったが、かかりつけ医と話したことがあるという回答は5%であった。さらに書面にACPを記していると回答したのは4%であった。 10年以内に家族や親類を亡くした方は487名(45%)で、病院で亡くなった方は71%、自宅20%、介護施設9%であった。このうち死亡前1週間における救急搬送されたのは27%で、自宅からの救急搬送56%、介護施設からが31%、病院からが16%であった。また死亡前に人工蘇生を受けたのは21%、死亡当日にICU管理だった方は12%であった。 亡くなった方の望ましい死の達成を評価する尺度であるGood Death Inventory(GDI)の代理評価の結果としては、からだの苦痛が少なく過ごせた(病院44%、自宅50%、施設65%)、臨んだ場所で過ごせた(病院29%、自宅81%、施設29%)、楽しみになるようなことがあった(病院19%、自宅77%、施設43%)、医師を信頼していた(病院43%、自宅65%、施設46%)、人に迷惑をかけてつらいと感じていた(病院33%、自宅33%、施設29%)、家族や友人と十分に時間を過ごせた(病院54%、自宅63%、施設44%)、身の回りのことは自分でできた(病院23%、自宅46%、施設6%)、落ち着いた環境で過ごせた(病院49%、自宅76%、施設71%)、人として大切にされていた(病院69%、自宅85%、施設77%)、人生を全うしたと感じていた(病院55%、自宅63%、施設67%)という回答を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
倫理委員会の承認や地域の職能団体のコンセンサスを得ることに時間を要したことにより、予定から半年遅れて研究を進めている状況である。 現在までの進捗としては、市民を対象とする介入前調査を終え、また今後の介入に向けて、M市地区医師会を中心とする医療・介護関連機関および行政職員を含む15 名から成るステアリングチームを編成、また具体的な介入手順書および介入モニタリング票を作成している。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、緊急時連絡シート(ふくろうシート)の運用、教育、ネットワーキングからなる複合介入を行う。松戸市内の要介護状態にある独居高齢者および看護師配置のない居住系高齢者施設の入居者(計4800人)を対象とする。登録目標は、その30%である1500 人とする。 介入に先立ち、M 市内のケアマネジャー330 人を対象に「ふくろうシート運用説明会」を開催する。運用マニュアルや家族への説明パンフレットを配布し、それに沿った運用及び説明を行うよう依頼する。また、ふくろうシートの項目のうち、病状・治療経過・治療方針、投与中の治療の主軸となる薬剤、身体状況や予想される緊急病態、表明された本人意思や家族の希望等に関して、ケアマネジャーから問い合わせがあった場合、主治医や訪問看護師、外来看護師は積極的に協力してほしい旨を医師会や訪問看護ステーション連絡協議会などを通じて医師や看護師に依頼する。 松戸市消防局および搬送先となる病院の救急部医師・看護師等にはふくろうシートの具体的な項目内容の共有、またそのシートの内容を治療やその後の療養先の選択の際に考慮してほしいという依頼をする。さらに、ふくろうシートに記載がある在宅療養支援診療所、訪問看護ステーションの24 時間対応体制加算・連絡体制加算、薬局の基準調剤加算、ケアマネ事業所の特定事業所加算などには、すでに24 時間対応の要件が存在することから、24時間にわたり連絡が可能であることを周知するとともに、患者の病態変化に対応するためには必要だと思われる場合には、遠慮なく照会することを推奨する。 またケアマネジャー、高齢者居住施設および訪問介護事業の介護職の医療的知識および治療や療養の意思決定支援に関する知識と実践力の向上を図る目的で研修を開催する。研修の方法としては、全体研修に加え、より高い教育効果を想定し、地区医師会メンバーによるアウトリーチ(施設に講師が直接赴いて具体的な症例検討やカンファレンス参加により教育研修を行う)も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
倫理委員会の承認や地域の職能団体のコンセンサスを得ることに時間を要したことにより、予定から半年遅れて研究を進めている状況である。27年度、介入や介入に際しての研修会などを実施できなかったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通り、介入および介入に際しての研修会などを実施し、予算計画に則り研究を遂行していく予定である。
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