研究課題/領域番号 |
15KT0005
|
研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
森下 直貴 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70200409)
|
研究分担者 |
松田 正己 東京家政学院大学, 現代生活学部, 教授 (90295551)
美馬 達哉 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (20324618)
中塚 晶博 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, その他 (20597801)
井口 高志 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (40432025)
鶴若 麻理 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (90386665)
村岡 潔 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (10309081)
藺牟田 洋美 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 准教授 (60250916)
|
研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2019-03-31
|
キーワード | QOL / 超高齢社会 / コミュニティ形成 / 老人モデル / 四機能図式 |
研究実績の概要 |
本研究では、到来する超高齢社会に対応するために、生成的・再帰的な「老成」の視点からコミュニティ形成型の老人像を導入し、これと従来の老人像を組み合わせて総合的な老人観を確立することを目指している。コミュニティ形成型老人像を構想し輪郭づけた27年度成果を受け、28年度にはとくに最晩年期の老人に焦点を当て、世代にまたがる<垂直のコミュにケーション>がコミュニティ形成の基軸となる点を理論づけた。 以上を踏まえて29年度では、介護現場において目標(尊厳や幸福の実現)と科学的なQOL評価とが乖離する状況を踏まえ、両者に通底する「人間の生」を全面的に把握することを通じて乖離を埋めるため、研究代表者が独自に開発した「四機能図式」を用い、「QOL」の概念枠組みを哲学的に検討し再構成した。その結果、QOLを構成する生存・生活・人生の構造(機能パターン)を把握し、主観的指標と客観的指標、並びに、主観的評価と客観的評価を同じ枠組みの中で関連づけることに成功した。これと合わせて現場で活用できるように幸せ意識と生活満足度に関する尺度づくりを試作した。 他方、上記のQOL研究との関連において以下の理論的・実証的な研究を行った。すなわち、老人の生における性の位置づけ、老成学と東アジアの思想伝統(孝)との関連、老人世代のコミュニティ形成の事例として「結核予防婦人会」の調査、最晩年期の老人の生き方の事例として「新老人の会」シニア会員の調査、シリバー世代のエイジレス就労をめぐる意識調査、介護をめぐる「医師・患者・家族関係」のモデル開発、さらに、デイサービスにおける認知症の本人/東日本大震災被災地域における高齢者や要介護者/知的障害の当事者に対する聞き取り調査である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
QOLの概念枠組みを理論的に解明できたことは大きな成果だと考えている。また、老人世代のコミュニティ形成の事例としての「結核予防婦人会」の調査は完了し、デイサービスにおける認知症の本人/東日本大震災被災地域における高齢者や要介護者/知的障害の当事者に対する聞き取り調査もほぼ完了し、シリバー世代のエイジレス就労をめぐる意識調査も進展した。他方、老人の生における性の位置づけ、老成学と東アジアの思想伝統との関連づけは途上であり、最晩年期の老人の生き方の事例としての「新老人の会」シニア会員の調査の解析は新年度に回され、介護をめぐる「医師・患者・家族関係」を「三者関係」かつ「仲裁関係」 として捉えるモデル開発はなお検討中である。その他、ビハーラ研究、高齢者労働組合は進んでいない。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、老成学研究全体の締めくくりとして、日本人にふさわしい生き方・老い方・死に方の基軸を具体化するため、伝統思想の中の「理想」とデジタル文明の存在観とに通底する考え方を浮かび上がらせ、これをモデルとして明確に打ち出す。そしてその周囲にその他の理論的・実証的研究を位置づける。以上の成果を持って到来する超高齢社会におけるコミュニティ形成型老人像を核心とする総合的老人観を基礎づける。研究成果は書物として刊行する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新老人の会アンケート調査の解析に伴う費用として計上していたが、解析が新年度にずれ込んだため未使用となった。新年度には早々に使用する予定である。
|