研究課題/領域番号 |
15KT0007
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
白井 こころ 大阪大学, 医学系研究科, 特任准教授(常勤) (80530211)
|
研究分担者 |
近藤 克則 千葉大学, 予防医学センター, 教授 (20298558)
磯 博康 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50223053)
尾島 俊之 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50275674)
大平 哲也 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (50448031)
|
研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2019-03-31
|
キーワード | 高齢者 / 健康の社会的決定要因 / 社会関係資本 / ポジティブ心理要因 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、地域におけるライフコースを通した、加齢(aging)の過程において、健康の社会的決定要因を考えること、また地域における高齢者の健康な老いを支える要因の検討と、メカニズムの探索を進めることである。支援者・被支援者の両方を主体にした、地域包括ケアシステムの構築が求められる現在、豊かな老いを実現するために、社会関係資本や、個人・地域のポジティブ心理資源に着目して検討を進めることは重要であると考える。 今年度の活動として、本研究では研究計画に従って、市町村と協力協定の締結を行い、県内での調査と全国調査の比較を行えるように準備を進めてきた。本年度は、主任研究者が研究機関を移動する事情があり、今後の調査実施と研究協力に向けた、市町村・保険者等との調整の時間を重要視した。 また、新たな研究データの取得と並行して、現在までに収集されたデータによる解析を進めており、健康の社会的決定要因の視点から報告をした。共著者とともに、社会関係と血糖コントロールの関係、坂道の多い物理的環境とつながりや信頼感の強さによる心理的環境が、糖尿病の重症化に与える影響について検討を進め、国際専門誌にて報告した。加えて、認知症と社会経済的要因の関係(WCE2017)についての報告、公衆衛生学会におけるポジティブ心理要因と健康についての報告等を実施した。またその他、相対的所得とうつ傾向の関係、社会参加と認知症発症の関係について、それぞれ検討結果を国際誌へ報告した。 本研究では、メカニズム検討と共に、当該研究の知見に基づく地域資源や地域住民の健康状態について、指標の「見える化」を進めることも企図しており、調査地域のニーズや住民の課題・関心を理解し、より実践に即したエビデンス提供を行うために、今年度は県内市町村における母子保健・成人保健データの整備事業や、地域での健康づくり事業等への協力を積極的に行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の通り、県内での調査対象市町村とは研究協力協定の締結をはじめ、調査実施を順次進めている。また一部の市町村では、調査実施と並行して、地域の健康状態の重点課題の評価と、地域における健康づくり推進のために、母子保健データの分析作業ならびに、社保・国保健診データの分析・地域別の評価を実施し、市町村の地域における保健事業、健康づくり事業の実態把握と、市町村への調査結果の還元を一部行った。 また、ポジティブ心理要因と健康の関係については、疫学会での口頭発表、公衆衛生学会でシンポジウム等を行い、シンポジウムは立ち見が出るほど盛況のもと報告を行うことができ、当該テーマへの関心の高さを垣間見ることができた。加えて、社会参加と認知症発症の関係ならびに、社会関係と糖代謝についての検討、地理的環境と心理的環境による糖尿病悪化の関係等について検討を行い、学術雑誌に報告した。上記の通り、調査実施ならびに研究の進展については、概ね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、高齢者の役割や居場所の重要性に着目し、健康の社会的決定要因の視点から、高齢者の健康を支えるメカニズムについて、構造的機序と生物学的機序を解明するために、県内の調査協力自治体における調査実施と地域の健康づくり、介護予防施策への還元を進めることを企図している。 ポジティブな心理要因ならびに、社会関係資本に着目した健康のメカニズム検討は、具体的な地域における健康づくりや介護予防の活動に落とし込むことができる可能性が高いと考えられる。世界的に見ても特徴的な長寿社会である日本から世界へ発信するエビデンスづくりを目指すとともに、地域社会において、実践に結び付き、直接的に還元できる研究を進めたいと考えている。 また、研究期間内に共同研究者の先生方と共同しながら、全国都道府県の30以上の自治体において全国調査を実施し、沖縄地域と他地域との特徴的な違いならびに、共通点等についても検討を進め、沖縄における健康づくりに資するとともに、世界的に特徴的な長寿の社会的決定要因についての報告を行うことを目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は主任研究者の本務大学の移動があり、研究計画の修正が必要となったことから、次年度以降の使用額が生じました。
|