研究課題/領域番号 |
15KT0013
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
日高 昇平 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (50582912)
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研究分担者 |
ディブレクト マシュー 京都大学, 人間・環境学研究科, 特定講師 (20623599)
高田 美絵子 (森島美絵子) 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 助教 (30435531)
平 理一郎 基礎生物学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (80712299) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | カルシウムイメージング / コネクトミクス / 計算神経科学 / データサイエンス / 情報理論 |
研究実績の概要 |
大脳皮質は、知覚、運動、情動といった脳の高次機能を司る重要な役割を担っている。先行研究から、個々の神経細胞タイプを決定する形態や、発現分子、電気的性質等のミクロ的な知見や、あるいは特定課題に賦活する脳領野などのマクロ的な知見が得られている。しかし、個々の神経細胞の関係を、ネットワークとみなした中間(メゾ)レベルに関しては、多くが未解明である。 メゾレベルの神経機能の理解するには、多数の神経細胞の解剖学的・情報論的ネットワークを同定する必要がある。本研究では、こうした背景を踏まえ、カルシウム(Ca)イメージング法で得られた神経活動データから、解剖学的な神経結合(コネクトーム)を推定する数理手法の構築を目指した。 前年度までの研究成果により、生体実験(in vivo), 生体外実験(in vitro),計算論モデル( in silico)の各班の基本的な役割・連携を確立した。それを踏まえて平成29年度の目標として、予備実験で得られたCaイメージングデータに対して、in silico班の開発する非線形時系列解析法を応用しその有効性の確認を目指した。具体的には、すでにin vivo班は100程度の神経細胞活動の同時記録データを取得することに成功し、方法論の検証に要求される最低限度の実データの提供を行った。In silico班は、得られたCaイメージングデータを基に、データに潜在する高次情報を分割する新たな数理的手法の開発を一定程度まで進めており、それを用いたデータ分析のフェーズに移っている。これと並行して、Ground truthの分かっている理論的データへの分析手法を適用することで、潜在的な情報構造を推定できることを確認した。こうした一連の成果は、現在神経科学論文誌へ投稿する論文にまとめており、一部の成果はすでに複数回の査読を経て、近く論文誌に掲載されると見込まれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画段階の目標には、「研究実績」の項目ですでに述べた実績に加えて、カルシウムイメージングデータから神経発火をより正確に同定する前処理の手法の開発も含まれていた。しかし、この前処理の手法開発は、既存の手法の応用にとどめ、より実質的なメゾスケール情報ネットワークの分析に注力するべく目標を修正した。この目標の修正は、結果的に、この前処理の高精度化を行わずとも、情報ネットワークの解析が進展可能であることが判明したためである。また、目標の修正にともなって、理論的に生成したデータに関して、潜在的な構造の推定が可能であるか確認するための技術的な研究へと重心を移して、研究を進めている。一方、当初平成28年度後期以降に解析結果の学術誌への投稿を予定していたが、この目標が未達であることを考慮して、現在の進捗は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
計画段階では、in vitro班とin vivo班の連携により、生体中の神経活動と電気生理的な神経結合の両面から神経結合を同定する予定であった。現状では、この連携に関しては、多少の遅れが見られ、未だ同じマウスに対してin vivo/ vitro両面の神経結合の同定には成功しておらず、実験系の更なる改良を模索している。これに加えて、in vivo班を主担当する平の異動により、研究環境が変化し、当初予定より緊密な連携が難しくなっている。こうした現状を踏まえ、今後は、すでに実施している隔週のウェブ会議に加え、実地での密な会合の頻度を増やすなど、研究進展の遅れを補う方策を検討している。また、遠隔地での研究の連携をより容易にするため、ネットワーク経由でのデータの共有などを進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究において、理論・データ解析班が理論構築に重点をおいたため、高性能の計算機を購入するにいたらず、一部の予算が未使用分であった。次年度の研究において、実験データのデータ解析を行うための計算機の購入などに充てることで予算の残額は、研究の進展とともに解消されることが期待される。
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