研究課題/領域番号 |
15KT0029
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
小山 博之 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90234921)
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研究分担者 |
須賀 晴久 岐阜大学, 生命科学総合研究支援センター, 准教授 (20283319)
清水 将文 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (60378320)
一家 崇志 静岡大学, 農学部, 助教 (90580647)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 根圏微生物 / チャ / 有用微生物 |
研究実績の概要 |
「植物と有用微生物の相互作用」(植物免疫の活性化、養分吸収の向上、生育促進等)を活用することは、食糧循環を成立させるための重要な要素であるが、生物農薬(資材)として積極的に活用できている状況ではない。この提案では,代表者の研究を発展させ,「植物と有用微生物の相性」を決める仕組みを分子レベルで解明し、有用菌を活用するための学術的な根拠を提供することを目的としている。これは、近年注目されている、プラントプロバイオティクスの分子基盤を明らかにするもので、有用菌の実効性の証明や重要な分子を同定することは、学術的なインパクトが大きいと考えられる。 初年度にあたる平成27年度は、8月の採択通知以降、①茶樹根圏からの微生物群(細菌)の単離、②単離菌群の同定及び、③モデル植物における地上部の遺伝子発現を解析した。茶樹根圏からおよそ200系統の細菌を単離した。 茶樹の栽培地としては、栄養が過多の場合に根圏微生物量が減少することに配慮して、静岡県内の準有機栽培(減農薬、施肥低減管理)圃場を使用した。単離菌株は、定法に従ってクローン化して分類試験を行ったところ、その多くが枯草菌類で根分泌物質に対して走化性を示すものも、いくつか存在することを確認できた。一方、植物免疫の亢進や、生育促進現象をモニターするために、典型的な植物免疫シグナル関連遺伝子の、遺伝子破壊株系統を増殖するなど、次年度以降に向けた準備も整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、茶樹根圏微生物の単離と同定が主な目的であったが、異なる栄養環境や、栽培履歴で育てられた茶樹の根圏微生物を単離して200系統程度樹立できたことから、十分な成果が得られたと判断できる。一方、この研究では、海外での実用化試験も最終年度に計画しているが、インド工科大学(インド)、スブラスマレット大学(インドネシア)などを、別経費で訪問して、関係者との議論を深めることもできた。枯草菌には病原菌は少なく、生物安全性(バイオセーフティ)の観点から、海外での使用ができる菌である可能性が高いと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度は材料の作成が中心となったが、2年目は成果公表に力点を置いて、菌学からの解析(根圏微生物のメタゲノム解析結果と合わせて、菌をプロファイルする)、植物免疫活性化の分子マーカー解析(モデル植物シロイヌナズナ及び、モヤシ豆、カウピーなどの南アジア、アフリカで栽培されている豆類)を進める。また、MTAなどの必要な手続きを行ったうえで、インド工科大学等と協力して、圃場試験の実施の準備を進める必要がある(解析は、研究3年目に相当する、平成29年度に実施するが、28年度には準備として実施する必要がある)。
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次年度使用額が生じた理由 |
菌群の同定は、薬剤抵抗性や根圏のメタゲノム解析を実施したが、実用化を考慮する場合には、次世代シーケンサ解析による菌種の同定(確定)が必要となる。初年度は、採択が8月頃に通達されたために、次世代シーケンサの受託解析が実施できなかった。平成28年度は、この受託解析があるため、その予算を繰り越して確保した。
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次年度使用額の使用計画 |
菌の走化性や植物免疫の活性化などの実験では、キャピラリー法やマーカー遺伝子発現量のリアルタイムPCR解析などを実施する。この項目に必要な経費は研究調書で想定する範囲であり、当初計画通りに実施する。一方、次世代シーケンサ解析によるチャの遺伝子解析、菌種特定のための解析の一部には、今回繰り越した予算を使用する。
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