研究課題
世界で最も深刻な食糧問題の一つは、ハマウツボ科の寄生植物であるストライガ (Striga hermonthica) によって引き起こされるアフリカでの穀物生産の被害と考えられている。年間10億ドル以上もの被害を恒久的に与え続け、3億人もの貧困層の人々の生活に影響を与えているため、その被害規模から、「アフリカを貧困から救う最大の障壁」と国連より宣言されている。現時点では、この問題の有効な打開策は開発されておらず、アフリカ大陸の人口が倍増して20億人を超える2050年には、極めて深刻な食糧問題になると予想される。これを食い止めるには、ストライガを撲滅する技術を早急に開発し、食糧循環を正すことが極めて重要と考えられる。 ストライガ撲滅の切り札となるのは、ストリゴラクトン(SL)と呼ばれる低分子化合物と考えられている。SLは、ホスト植物が根から放出するホストファクターであり、ストライガの発芽を刺激する非常に強い活性を持つことが知られている。これを利用して、SL活性化合物によりホスト植物非存在下でストライガを強制的に発芽させ、「自殺発芽」に追い込む方法が考えられてきた。しかし、開発の鍵となるSL受容体の同定やシグナル伝達の分子機構を解明する試みはこれまで一切行われてこなかった。本研究では、我々が最近同定したストライガのSL受容体の情報を活用し、新たな自殺発芽剤の開発に取り組んでいる。今年度は、新たな構造骨格の開発と最適化に取り組み、受容体の選択性、構造要求性、活性化のメカニズム等、基礎的な情報収集を行った。ここで得た情報は、選択性の制御や生理活性の向上へと活用できると期待される。
2: おおむね順調に進展している
化学者との共同研究より、100以上のアナログ化合物を合成し、in vitroおよびin vivoでの評価を終えたため、おおむね計画通り順調に進展していると考えている。
化合物のさらなる改良に取り組むとともに、受容体の選択性を自在にコントロールできるモデルを確立し、10個の受容体それぞれに標的するアゴニストの開発に取り組む。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Science
巻: 349 ページ: 864-869
10.1126/science.aab3831
巻: 350 ページ: 203-207
10.1126/science.aac9476
http://www.itbm.nagoya-u.ac.jp/en/members/y-tsuchiya/