本研究は、暴力的紛争(暴動・民族浄化・集団虐殺・内戦など)の勃発を予知するシステムを構築するために、①理論的な枠組みの整理、②リアルタイムで分析可能なイベント・データ・システムの構築、③イベント・データを分析し、紛争の予知に役立てる統計モデルの開発、の3つの作業を実施している。令和元年度の研究実績は以下の通りである。 「①理論的な枠組みの整理」については、若手研究者とともにを中心に作業を進めた。その成果は12月にカリフォルニア大学アーバイン校にて行った招待講演の内容に含まれており、現在二本の論文を仕上げている段階である。 「②リアルタイムで分析可能なイベント・データ・システムの作成」については、スペイン在住のスペイン語自然言語処理の専門家と共同研究の形で作業を進めた。同時に、"Big Data and Natural Language Processing in the Social Sciences & Humanities"と名付けたワークショップを9回実施した。国内外から講師を迎え、人文社会科学の研究者や学生を対象に自然言語処理の様々な側面についての講義・訓練を行った。さらに、イベント・データの質や精度を検証するために必要な教師データを作成するためのシステムを開発し、7月からその作業を実施した。これを担当する人材育成のため、メキシコから学生3名を東京に招いて訓練を行った。 「③イベント・データの分析と統計モデルの開発」作業に関しては、分析作業を継続して行い、5月のLatin American Studies Associationにて国際共同研究チームのイベント分析セッションを組織し、成果報告を行った。また、9月から1月にかけて、カリフォルニア大学アーバイン校の民主主義研究センターにて研究活動を行い、イベント統計分析モデルの成果報告(招待講演)を行った。
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