研究課題/領域番号 |
15KT0049
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山田 満 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (50279303)
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研究分担者 |
Marques Luis サレジオ工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10451387)
上杉 勇司 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (20403610)
滝澤 三郎 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, その他 (30554935)
本多 美樹 法政大学, 法学部, 教授 (30572995)
本多 倫彬 早稲田大学, 地域・地域間研究機構, その他(招聘研究員) (30750103)
田中 有佳子 (坂部有佳子) 青山学院大学, 国際政治経済学部, 助教 (50732715)
平川 幸子 早稲田大学, 留学センター, 准教授(任期付) (80570176)
桑名 恵 近畿大学, 国際学部, 准教授 (80596073)
島崎 裕子 早稲田大学, 平山郁夫記念ボランティアセンター, 助教 (90570086)
田中 紗和子 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 助教 (90732850)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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キーワード | 紛争予防 / 平和構築 / 人間の安全保障 / 東南アジア / 難民 / 災害 / 市民社会 / NGO |
研究実績の概要 |
2016年度の本科研研究会の研究実績としては、月例研究に他に、国際ワークショップの実施とシンポジウムの開催、8月インドネシア・バリで開催されたAsian Electoral Stakeholder Forum Ⅲへの参加が挙げられる。また研究分担者及び研究協力者が執筆参加した2冊の書籍を出版したことである。まず、11月9日にNGOネットワークのANFRELから代表のIchal Supriadi氏、スリランカPAFFREL代表のRohana Nishantha Hettiarchxhie氏、東ティモール紛争予防NGOのNelson Belo氏の3人を迎え、"Election and Civil Society in Asia: The Role of Free and Fair Election toward Peacebuilding"を開催した。本ワークショップの内容はワーキングペーパーとして2017年3月に刊行した。 次に、研究代表者、分担者、協力者が共同執筆した『難民を知るための基礎知識』(明石書店、2017年1月)の出版記念のシンポジウムを開催した。研究代表者が司会、研究分担者の滝澤三郎氏、他に執筆者の山本哲史氏、UNHCR広報官の守屋由紀氏の3氏が報告し、東京大学教授の佐藤安信氏が討論者として参加した。難民問題は紛争問題と深く関係し、「人間の安全保障」、人権や人道の観点から避けて通れない問題して、多くの聴衆者が参加するシンポジウムとなった。なお、本シンポジウムは難民プラットフォームとの共催で実施した。 次に、本科研関係者を中心として『東南アジアの紛争予防と「人間の安全保障」-武力紛争、難民、災害、社会的排除への対応と解決に向けて』(明石書店)を出版した。本書は、同科研月例研究会等での発表を通じた研究成果を、東南アジア地域(スリランカも含む)と同境界地域における紛争予防の視点から論じている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は国際ワークショップとシンポジウムを開催し、本科研研究成果を広く一般社会に還元できた。また同科研研究者の多くが参加した2冊の書籍を出版した意義も大きい。国際ワークショップでは本科研グループが重視する二つのネットワークの一つを招聘した。タイに本拠地を置く国際NGO、ANFRELの代表、スリランカ、東ティモールから3名の参加を得て、国際ワークショップのみならず、科研メンバーと意見交換会も実施することができた。意見交換会では2009年に武力制圧で和平を実現したスリランカの現状と強権的指導者から民主化を勝ち取った背景を聞くことができた。また、東ティモールは2017年度が独立後3回目の大統領・国民議会選挙であり、国家建設における民主化の定着度を聞くことができた。また、軍事政権が新たな憲法を制定し、2018年末に予定しているタイ総選挙の可能性を、ANFREL代表のイチャル氏が多くの選挙監視を経験した立場から説明した。 また、紛争と関わりの深い難民問題を多面的に分析した『難民を知るための基礎知識』(明石書店)を出版した。副題にあるように「政治と人権の葛藤を越えて」が示す国際政治の状況は、中東・北アフリカからの難民だけではなく、ミャンマーにおけるロヒンギャ問題も同様に深刻化している。ナショナリズム化する欧米諸国との対比で、東南アジア諸国をどのように分析・考察できるのかを同書の執筆過程から議論することができた。また、同書出版を記念したシンポジウム「今日の難民保護」を開催し、同書から得られた知見を多くの聴衆にも直接フィードバックできたことも大変有意義であった。 最後に、同科研助成、及び同科研研究会を通じて、代表者、研究分担者、研究協力者のそれぞれが積極的に学会報告、研究論文、著書共著、調査旅行を実施しており、それぞれが来年度の本科研の最終目的に向けて順調な仕上がりをしている。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は最終年度として主に二つの大きな成果を話し合っている。第一に、2016年に実施した国際ワークショップを今度は南洋理工大学ラジャラトナムセンター非伝統的安全保障研究所との共催で行うことである。同研究所はRSIS Monographを数多く刊行し、「非伝統的安全保障」の観点から従来の軍事力を背景とする伝統的な安全保障とは異なった「人間の安全保障」の視角から多くの研究者を擁している。本研究代表者が所属する早稲田大学社会科学総合学術院の先端社会科学研究所、地域・地域間研究機構アジア・ヒューマン・コミュニティ研究所との連携で、紛争後の平和構築のみならず、災害後の復興・復旧を含む地域間、市民社会・NGO、政府間など多様なアクター間の連携を議論したいと考えている。 また、同国際ワークショップの成果も反映させた英文学術書の出版を実現させたい。現在、所属の大学への英文図書出版助成を申請しており、総勢20名近い執筆陣を擁して、本科研の最終報告としたい。内容は、西欧化型のリベラル・ガバナンスのトップダウン式の導入ではなく、さらには現地当該国の文化や価値観を前提にした西欧型リベラル・ガバナンスを導入するハイブリッド型の方式を越えた新たなアジア型の枠組みを反映した内容にしたいと考えている。 したがって、本科研関係者のみならず、2016年度国際ワークショップに参加した市民社会・NGOの実務家、同上南洋理工大学研究所の研究者、さらにはガジャマダ大学の紛争解決・平和構築関係者にも参加してもらい、実際のフィールド経験を前提にした野心的な著書の作成を考えている。現在交渉中であるが、同分野で多くの著書を刊行しているRoutledge Contempory Southeast Asia Seriesへの出版を予定している。 最後に、紛争地域への調査に関する細心の注意と安全性を担保して最後の現地調査に臨みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年9月に研究代表者が勤務大学で役職に就いたことで、公務出張の頻度が多くなり自らの出張を見送ったことと、また予定していた研究協力者の体調不良で調査出張の支出がなくなったことの2点が影響した。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度は本科研最終年度であり、報告書作成や、国際ワークショップでの招聘人数の調整等で計画的に使用する。
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