研究課題/領域番号 |
15KT0051
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
岩本 誠吾 京都産業大学, 法学部, 教授 (50291787)
|
研究分担者 |
山本 和也 一般財団法人平和・安全保障研究所, 研究部, 客員研究員 (20334237)
八槇 博史 東京電機大学, 情報環境学部, 教授 (10322166)
吉田 和男 京都産業大学, 経済学部, 教授 (40182753)
岑 智偉 京都産業大学, 経済学部, 教授 (30340433)
藤本 茂 一般財団法人平和・安全保障研究所, 研究部, 客員研究員 (80319425)
|
研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2018-03-31
|
キーワード | 新科学技術・新兵器 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、本研究が対象とする新技術・新兵器のなかでも特に、無人航空機(いわゆるドローン)と標的型サイバー攻撃に焦点を絞り、研究を推進した。我が国の官邸へのドローン落下事件や官公庁・企業の重要技術・個人情報漏えい事件をきっかけとして、これら2つの対象は、急速に社会的関心事となった。本研究でも、その関心の高まりを踏まえ、研究対象とする意義が急速に高まったと判断し、これらを特に重視した。 本研究を開始した時点では、ドローンの規制議論は国内ではほとんど論じられることがない状況であり、「研究実施計画」に示したように、ドローンを含み新型兵器の規制議論は、特定通常兵器禁止制限条約(CCW)締約国会議といった国際会議に委ねられていた。しかしながら、上述のような国内情勢の変化は、これら技術の国内法規制を急速に活性化させることとなり、国際条約は一般的に各国国内法を如実に反映したものとなることから、日本国内での規制論と、その参照事例となっている他国の国内法の動向を検討することにした。 また、標的型サイバー攻撃に関しては、人工知能を使用した、より高度化・自動化された攻撃が増えつつある。本研究では、そうした自動化されつつあるサイバー攻撃の技術的動向を検討した。さらに、この新たな技術的動向が、一方で有益な技術でもある人工知能の平和的活用を妨げず、適切な規制を行う方法について、電子計算機上に実験室としてのサイバー空間を構築し、攻撃と監視のシミュレーションを実施するなどによって、研究メンバーで検討を行った。 公共政策モデル作成に関しては、データ収集のためのシステム設計を行った。実際の運用は、次年度から行い、収集されたデータによるモデル構築を進める。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者およびすべての研究分担者は、「研究実績の概要」で記した通り、当該研究テーマの世界的関心にともなう情勢の変化に対応しつつ、おおむね交付申請書に記載した「研究実施計画」に沿った研究を実施した。 また、本研究テーマおよび研究内容の先駆性が注目され、代表者所属機関である京都産業大学の理解と支援を受けて、同大学の総合学術研究所内に特定研究センターとして「グローバル公共財研究センター」という拠点を設けることが出来た。その結果、研究の進捗過程において、適切に会合を持ち、代表者の主導のもと、本研究テーマをめぐる世界的情勢の変化に関する情報の集約、これをふまえた互いの研究進捗状況の確認と意見交換ならびに知見の共有を効果的に実施することが可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
全体としては、平成27年度中の社会変化とそれに対応した研究実績に基づき、ドローンと、標的型および自律型サイバー攻撃を分析対象の中心に置き、以下の3点を軸に研究を遂行する。 まず法的規制論に関しては、平成27年度と同様に進める。ただし、「研究実績の概要」でも述べたように、本研究の分析対象に対する規制論の日本国内での高まりを踏まえて、国際条約交渉のみならず、国内の規制論、および他国における国内法規制論も分析に含める。次に技術論に関しては、ドローンやロボット兵器については当初から、自動(自律)は視野に入れられていたが、「研究実績の概要」でも触れたように、サイバー攻撃においても「自動化」の波が急速に進展している。このことを踏まえて、「自律化」によってもたらされる諸課題・被害に対する検討の比重を高める予定である。3番目に公共政策モデルに関しては、本年度から実装を開始するビッグデータ収集システムを利用し、モデルを構築する。こうしたデータ収集自体が、きわめて斬新な取り組みであることから、その過程では多くの試行錯誤が予想される。そのため、平成28年度は、モデル構築を最終目標としながらも、データベース自体の完成度を高めることも、ひとつの課題となる。 なお、研究の分担体制については、従来通りである。法専門家による規制論分析、技術専門家による技術論とその社会的影響の分析、政治経済学者により公共政策モデルとデータベースの設計を行う。グローバル公共財研究センターという研究拠点を得て、研究者間での更なる密接な連携が期待できる。 最後に、本研究のテーマは、ますます社会的関心を強めており、関連する産業も日々誕生しているのが現状である。この特殊性を考慮して、本研究では、ドローンベンチャー企業などを招いたシンポジウムを実施し、規制に対する社会のニーズを汲み取る作業を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
最新の科学技術発展動向を反映した文献資料が、次年度の出版を目指し企画・進行中であるとの情報を得たため、類似する文献資料の購入を控えたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
上で記した、最新の動向を踏まえた、科学技術の発展が今後の社会生活にもたらす影響を予測する文献資料の購入に充当する予定である。
|
備考 |
本研究の拠点として設置された京都産業大学グローバル公共財研究センターのホームページ。
|