研究課題/領域番号 |
15KT0053
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小林 哲郎 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 研究員 (60455194)
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研究分担者 |
多湖 淳 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80457035)
小川 祐樹 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (40625985)
李 洪千 東京都市大学, メディア学部, 准教授 (80621200)
浅羽 祐樹 新潟県立大学, 国際地域学部, 教授 (70403912)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 日韓関係 / 歴史/領土問題 / 世論 / メディア |
研究実績の概要 |
平成27年度は、パネル調査第1波、テレビ報道の情報学的分析、新聞報道の情報学的分析、ソーシャルメディアの解析、韓国メディアの分析を行う予定であった。まず、パネル調査第1波については、慰安婦などの歴史認識問題と竹島をめぐる領土問題に関する認知、知識、情報源を測定するとともに、慰安婦問題をめぐる日本の歴代首相の謝罪の効果を検証するサーベイ実験を準備した。日韓の双方で比較可能な実験を行うため、調査票を英語で作成したのちに日本語と韓国語バージョンを作成した。韓国語バージョンの作成は研究分担者である李洪千と浅羽祐樹が担当した。さらに、日本語バージョンと韓国語バージョンの調査票の同等性を確認するためバックトランスレーションを実施し、文言の調整を行った。日韓双方の調査会社から見積もりを取得して調査準備が整っていたが、平成27年末の慰安婦問題に関する日韓合意によってパネル調査の前提が大きく変化したため、調査を次年度に繰り越すことに決定した。日韓世論において慰安婦問題の顕在性が大きく高まったことで、実験操作が効きにくくなることが予想されたためである。現在、新しいバージョンでの調査票を作成し、平成28年度の早い段階での実施を目指している。テレビ報道の情報学的分析については、国立情報学研究所で蓄積している字幕データの提供を受け、解析を開始した。新聞報道の情報学的分析については朝日・読売・毎日の3紙のデータベースを購入し、韓国の新聞との比較分析を開始した。この分析は小川祐樹が主導しており、小林哲郎との共著論文を執筆中である。ソーシャルメディアの解析については小川祐樹がツイッターのデータをクロールして蓄積しているが、サンプリングされていないより完全なデータを購入して分析する可能性も検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅延が生じているのは、パネル調査第1波についてである。平成27年末の慰安婦問題に関する日韓合意によって当該争点の顕現性が一時的に急上昇し、準備していた実験刺激が効果を持たなくなる懸念があったため、合意からやや時間を置いて実験を行うために実施を延期した。平成28年度の早い段階でサーベイ実験を含むパネル調査第1波を実施することで遅延は解消できる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、昨年度から繰り越されたパネル調査の第1波を実施する。まず、慰安婦などの歴史認識問題と竹島をめぐる領土問題に関する認知、知識、情報源を測定するとともに、国際関係論におけるPower Transition理論に基づいて、日韓の相対的な経済力認知が慰安婦問題に関する争点態度やナショナリズムにどのような影響をもたらすのかを検討する。さらに、平成28年度は参議院議員選挙が予定されているため、これに合わせた時期に調査を実施する。このことによって外交、特に日韓関係に関する態度や認知が投票行動に及ぼす効果について実証する。慰安婦問題の合意履行については平成28年4月時点でまだ明確な方向性は見えていないため、合意や謝罪の効果については状況をよく判断した上で検討の俎上に載せることとする。また、パネル調査第2波で実施予定のImplicit Association Testについては、ほぼ準備が整ったことから、繰り越された第1波から使用する予定である。テレビ報道の情報学的分析については、先行する新聞データの分析結果を踏まえて、フレームの抽出を精緻化させる。視認によるフレームの分析はアルバイトのコーダーを雇って国立情報学研究所内で実施することを目指す。新聞報道の情報学的分析については、日韓の新聞のトピックの比較から徐々に歴史認識・領土問題へとフォーカスを絞る。さらに、時系列的な分析を行ってフレームごとのほう同僚の推移を検討する。ソーシャルメディアの分析については、新聞データのフレーム分析と組み合わせることで、マスメディア報道のうちどのようにフレームされた情報がソーシャルメディアで伝播しやすいのかを推定する。平成28年は韓国における研究協力者との連携をより密にするため、ソウルまたは東京で分析結果と今後の方向性について議論する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じているのは、主にパネル調査第1波の実施を延期したことによる。平成27年末の慰安婦問題に関する日韓合意によって当該争点の顕現性が一時的に急上昇し、準備していた実験刺激が効果を持たなくなる懸念があったため、合意からやや時間を置いて実験を行うために実施を延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の早い段階でサーベイ実験を含むパネル調査第1波を実施し、次年度使用額は執行される予定である。
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