研究課題
平成30年度は、元徴用工への賠償をめぐる裁判や慰安婦問題、レーダー照射問題などが相次いで生じたため、日韓関係が悪化した。こうした日韓関係と昨年度までの研究結果を踏まえて、平成30年度は1本のオンライン実験を実施した。昨年度までの研究で、日本と韓国の相対的な経済力の差が縮まることで紛争争点に関する態度が強硬的になることが示唆されていたため、本年度は日本の国力が将来強くなるか弱くなるかという認知を実験的に操作し、これが韓国との紛争争点に関する態度に及ぼす効果を検討した。その結果、実験操作の効果は明確には見られなかったが、紛争争点に関する態度は過去の実験と比較して大幅に強硬的になっていることが明らかになった。さらに、平成31年度は新聞データの分析はWord2Vecの手法を用いて日本と韓国の新聞における慰安婦問題と竹島問題の報道のされ方の違いを定量的に解析し、Asian Political Methodology Meetingで発表した。研究期間全体を通して、実験、調査、テキスト分析を駆使して日韓関係における紛争をめぐる世論のダイナミクスを分析した。日韓関係や東アジアの地政学的状況が刻々と変化する中での分析は困難であったが、パブリックディプロマシーが日韓協力の必要性に及ぼす効果や(英文査読誌に掲載済)、日韓の経済的バランスの変化が紛争的争点態度に及ぼす効果(英文査読誌に投稿済)、紛争争点に関する日韓の新聞報道の差異(和文査読誌に掲載済)など、重要な知見をもたらした。また、韓国の研究者との協力を通して韓国でも実験や調査を実施し(国際会議で受賞)、情報学や韓国政治の専門家とも連携して多角的なアプローチを実現した点に本研究プロジェクトの特徴が見られる。一方、ソーシャルメディアの分析とテレビ報道の分析については研究期間内に成果を発表することができなかったため、今後も継続して分析を行う。
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