• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

二機能性キラル金属ナノ粒子触媒の遷移状態における不斉発現機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15KT0058
研究機関東京大学

研究代表者

宮村 浩之  東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (00548943)

研究期間 (年度) 2015-07-10 – 2018-03-31
キーワード固相触媒 / キラル金属ナノ粒子 / 不斉合成 / 不斉1,4付加反応 / キラルジエン配位子 / 高機能触媒 / 反応機構解明
研究実績の概要

本年度は,まずキラルジエン配位子を共有結合でスチレン誘導体と連結したモノマーを合成した.本配位子含有モノマーとエポキシ基と水酸基を熱架橋可能な官能基として含有するモノマーを共重合させた高分子(高分子A)を合成した.同時に本配位子含有モノマーとトリメトキシシリル基をゾルゲル架橋可能な官能基として含有するモノマーを共重合させた高分子(高分子B)を合成した.これらの高分子Aと高分子Bを担体としてRhナノ粒子およびRh/Ag合金ナノ粒子を高分子カルセランド法で担持したキラルジエン配位子一体型金属ナノ粒子触媒の調製に成功した.これらの触媒はキラルジエン配位子の外部添加なしに高収率,高エナンチオ選択性をもってアリールボロン酸のα,β不飽和カルボニル化合物に対する不斉1,4付加反応を触媒することが明らかとなった.特に高分子Bを担体として用いた触媒は活性,選択性の低下なしに複数回の再使用が可能であった.また,興味深いことにアリールボロン酸のα,β不飽和アミド化合物に対する不斉1,4付加反応においては,外部添加のキラルジエン配位子を用いる際はLewis酸の添加が高収率を得るのには必要であったが,本一体型触媒を用いる場合そのようなLewis酸を添加しなくても高い収率で目的物を得ることができた.本結果はこのような一体型触媒を調製することで活性種がより安定に保持され高活性につながったことを示唆する.したがって,これらの一体型触媒は今後固相担体中でのキラル金属ナノ粒子の活性状態,反応における遷移状態を観測するにあたり鍵となると考えられる.一方で,Rhナノ粒子触媒が芳香族化合物の水素化反応に有効であることを見出した.芳香族化合物の水素化反応は有機合成のみならず水素貯蔵,輸送の分野でも重要な反応である.従ってこのような反応のナノ粒子表面における反応遷移状態の解明はより活性な触媒構築において重要である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は当初の予定通り,固相担体中でのキラル金属ナノ粒子の活性状態,反応における遷移状態を観測するにあたり鍵となるキラル配位子―金属ナノ粒子一体型固相触媒の開発に成功した.また,本触媒は活性,および選択性を維持したまま回収,再使用が可能なことから,その触媒活性種が固相担体中で保持されていると考えられる.従って本触媒を,前年度に開発したSwollen-resin magic angle spinning (SR-MAS) NMR解析と2つの最新の技術,diffusion filterとisotope mixingを融合させた固相NMR解析法でもって解析することで活性種に関するより詳細な情報が得られると考えられる.
一方で,Rhナノ粒子触媒の芳香族化合物の水素化触媒としての優れた反応性を見出した.本反応の基質活性化の遷移状態研究を含めたメカニズム解明にも着手した.

今後の研究の推進方策

まず,本年度開発したキラルジエン配位子―金属ナノ粒子一体型触媒のさらなる触媒調製条件の最適化を行う.具体的には高分子担体中でのキラルジエン配位子と金属ナノ粒子の比率の最適化,合金ナノ粒子触媒における二種類の金属の混合比率の最適化が挙げられる.より高活性かつ高選択性を示す触媒を開発することで,そのような触媒中ではより反応性が高く安定な触媒活性種が存在できていることが予想される.したがって,最適化された触媒を分光学的な手法を用いる解析に用いることでより明確な情報が得られると考えられる.一方で,キラルジエン配位子―金属ナノ粒子一体型触媒に固定化されたキラル配位子とは逆の立体を有するジエン配位子を様々な割合で外部添加することで得られる非線形効果の検証を行う.外部添加の配位子のみでこのような非線形効果を観測したところこれまでに正の非線形効果が得られているが,その結果と比較することで触媒活性種における配位子と金属種との複合化の様式を見積もることができると考えられる.
一方で,昨年度見出したRhナノ粒子触媒の芳香族化合物の水素化反応における基質活性化の反応メカニズムの解明についても検討を行う.具体的にはXPSやXRDといった分光学的な手法によるナノ粒子触媒の触媒構造解明および,触媒反応の反応速度論的な解析により,反応速度次数の決定や遷移状態の活性化エネルギーの算出を行う予定である.

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Asymmetric Arylation of Imines Catalyzed by Heterogeneous Chiral Rhodium Nanoparticles.2016

    • 著者名/発表者名
      Yasukawa, Tomohiro; Kuremoto, Tatsuya; Miyamura, Hiroyuki; Kobayashi, Shu
    • 雑誌名

      Org. Lett.

      巻: 18 ページ: 2716-2718

    • DOI

      10.1021/acs.orglett.6b01172

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Chiral Ligand-Modified Metal Nanoparticles as Unique Catalysts for Asymmetric C-C Bond-Forming Reactions: How Are Active Species Generated?2016

    • 著者名/発表者名
      Yasukawa, Tomohiro; Miyamura, Hiroyuki; Kobayashi, Shu
    • 雑誌名

      ACS Catalysis

      巻: 6 ページ: 7979-7988

    • DOI

      10.1021/acscatal.6b02446

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] <i>N</i>-Heterocyclic Carbene Coordinated Heterogeneous Pd Nanoparticles as Catalysts for Suzuki&ndash;Miyaura Coupling2016

    • 著者名/発表者名
      Min, Hyemin; Miyamura, Hiroyuki; Kobayashi, Shu
    • 雑誌名

      Chem. Lett.

      巻: 45 ページ: 837-839

    • DOI

      10.1246/cl.160369

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Hydrogenation of Aromatic Compounds Using Polymer Immobilized Metal Nanoparticle Catalysts2017

    • 著者名/発表者名
      MIYAMURA, Hiroyuki; SUZUKI, Aya; KOBAYASHI, Shu;
    • 学会等名
      日本化学会第97春季年会
    • 発表場所
      慶應義塾大学 日吉キャンパス (神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2017-03-16 – 2017-03-19
  • [学会発表] 配位子固定化不均一系キラルロジウムナノ粒子触媒の開発と1,4-付加反応への応用2017

    • 著者名/発表者名
      MIN Hyemin・宮村 浩之・西野 浩平・小林 修
    • 学会等名
      日本化学会第97春季年会
    • 発表場所
      慶應義塾大学 日吉キャンパス (神奈川県横浜市))
    • 年月日
      2017-03-16 – 2017-03-19
  • [学会発表] 不均一系金属ナノ粒子触媒を用いる有機合成反応の開発 ー反応集積化と不斉合成への展開ー2016

    • 著者名/発表者名
      宮村 浩之
    • 学会等名
      関西学院大学大学院理工学研究科 機能性ナノ単一サイズ有機分子創製研究 パイスター分子制御による未来型物質変換研究拠点 2016年度 合同シンポジウム
    • 発表場所
      関西学院大学 神戸三田キャンパス (兵庫県三田市)
    • 年月日
      2016-12-16 – 2016-12-16
    • 招待講演
  • [学会発表] 芳香族化合物の高効率水素化反応に有効な不均一系金属ナノ粒子触媒の開発2016

    • 著者名/発表者名
      鈴木 綾,宮村 浩之,安川 知宏,小林 修
    • 学会等名
      第110回有機合成シンポジウム2016年【秋】
    • 発表場所
      早稲田大学国際会議場 (東京都新宿区)
    • 年月日
      2016-11-10 – 2016-11-11
  • [備考] 東京大学大学院理学系研究科/有機合成化学研究室

    • URL

      http://www.chem.s.u-tokyo.ac.jp/users/synorg/index.html

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi