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昨年度までに見出したAl配位子を持つPd錯体を用いた二酸化炭素のヒドロシリル化反応について，中間体錯体の構造解析と理論計算を行った。その結果，本反応の反応機構と二酸化炭素への求核付加段階の遷移状態を明らかにするとともに，アルミニウム配位子の特異な効果を明らかにした。
また，対応する13族金属-イリジウム錯体の合成と反応性について検討した結果，中性一価のガリウム(ガリレン)をピンサー型配位子とする三価イリジウム錯体が合成できることを見出した。本錯体の構造はX線結晶構造解析により決定し，また理論計算を行うことで，そのガリウム－イリジウム結合の様子や電子状態について明らかにした。本錯体は，ガリレンを持つピンサー 型錯体の初めての合成例として意義深い。さらに本錯体は，カリウムグラファイトによる2電子還元により，ガリレン配位子と塩化ガリウムをZ型配位子として持つ珍しい一価イリジウム錯体へと変換することができた。本錯体についてもAIM解析やNBO解析を行い，その結合状態解析を行った。その結果，本錯体のガリレン配位子が極めて強力な電子供与性配位子として働いていることが明らかとなった。また本錯体は，配位子置換反応やシランの酸化的付加反応を起こし，ガリレン配位子を保持したまま異なる錯体へと変換できることもわかった。これらの結果は，13族金属を配位子とする遷移金属錯体の構造と反応性について，理論計算と自県両面から明らかにしたものとして意義深い。
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