化学反応は、遷移状態における原子の配置や運動によって決定付けられるため、遷移状態近傍における波動関数の形状を直接観測する意義は大きい。本研究課題は、振動や回転に対する波動関数・状態確率分布を実空間で可視化することを目指し、独自のコンセプトに基づいた2次元イオン画像観測装置を製作した。時間分解クーロン爆発イメージング法と組み合わせることにより、高い時間・空間分解能と高検出効率を両立させた観測を実現し、1方向にそろって回転する分子集団が示す量子論的挙動を初めて明らかにした。さらに、電子励起分子に対する回転固有状態の観測や、分子運動の実時間観測を活用した分子クラスターの分光学的研究へと展開した。
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