研究実績の概要 |
1. ピロロカルバゾール骨格の一挙構築 平成29年度までの成果として、アジド部位を有する共役ジインの金触媒反応により、ピロロカルバゾールやベンゾカルバゾール等の縮環カルバゾールを効率的に合成できることを見出していた。平成30年度は、これらの反応のメカニズム解析を実施し、本反応の二段階目が近接効果により効率的に進行していることを明らかにした。さらに、インドールを求核種とする反応により得られた生成物が興味深い酸化還元特性を示すことを見出した。 2. 金触媒とピリジンN-オキシドを用いたベンゾ[6,7]シクロヘプタ[1,2-b]フラン骨格の構築 金触媒とピリジンN-オキシドを用いたベンゾ[h]クロメン骨格の構築を試みた。ビニル基を有する1,4-ジイン-3-オンを合成し、3,5-ジクロロピリジン N-オキシドとHFIP存在下5 mol %の金触媒を付したところ、予想に反してベンゾ[6,7]シクロヘプタ[1,2-b]フランが効率的に生成することを見出した。反応の一般性について検討を加え、本反応が様々な置換基を有する基質に適用可能であることを確認した。本反応は、金触媒によるN-オキシドの共役付加、ピリジンの脱離による金カルベノイドの生成、カルベノイドとアルケンの反応、アルキンの1,2-転位、およびフラン環形成等を経由する多段階反応により進行しているが、特にアルキンの転位においては近接効果が大きな役割を果たしていると考えられる。得られた生成物の変換を検討した結果、酸化剤とルイス酸を用いることにより、多環式ナフトフラン誘導体に変換することに成功した。
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