研究課題/領域番号 |
15KT0062
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡田 美智雄 大阪大学, 理学研究科, 教授 (30281116)
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研究分担者 |
Dino Wilson 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (60379146)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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キーワード | 表面界面物性 / 表面反応 |
研究実績の概要 |
これまで製作してきた超高真空対応型配向分子線装置および連続超熱分子ビーム装置の調整を昨年度に引き続き行った。連続超熱分子ビーム装置では真空中への断熱膨張により超音速分子ビームを発生させるノズルを1400K程度まで加熱することにより並進エネルギーが数eV程度までの分子ビームを発生することができる。本年度は、超音速分子ビームの特性を評価するため、飛行時間型エネルギー分析に使用するチョッパーを作製し、その特性評価を行った。併行して、同様の仕様の連続超熱分子ビーム装置を用いて、酸素分子、エチレン分子および塩化メチル分子が銅および銅合金上で繰り広げる表面反応過程を高分解能放射光X線光電子分光により明らかにした。29年度にこれら開発してきている2種類の分子線装置を用いて、排気ガス処理触媒のモデル表面であるPtおよびRh表面にCO分子を吸着し、そこに様々の状態のNO分子を照射し、反応の遷移状態を調べる予定で装置の調整を進めてきた。さらに高速レーザー分光を行うための準備を研究協力者と進め、遷移状態解明のための分光法開発の予備実験を開始した。 また、物質材料研究機構の倉橋グループとの共同研究として、銅合金表面上における初期酸化過程に入射酸素分子の立体異方性がどのように寄与するかを明らかにする実験を開始した。ここでは六極磁場により酸素分子の量子状態を選択し、配列状態を制御する手法を用いている。予備実験によりヘリコプター型衝突と車輪型衝突で大きな反応性の違いがあることがわかった。 反応の遷移状態を解明するためには、理論計算により実験結果のシミュレーションを行うことが必要となる。これについては、上述した予備実験で得られた様々なデータを研究分担者と一緒に理論解析を進め、今後遷移状態の解明に展開するための素地を固めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現有する2台の分子線装置の調整は、やや手間取っているが、いろいろな仕様の部品や方法を試行錯誤してほぼ実験に応用する目処がついたところである。放射光施設にある同様の仕様の装置を用いて、酸素分子、塩化メチル分子およびエチレン分子の超熱分子ビームを発生し高分解能X線光電子分光により、反応過程を調べる研究は昨年度に引き続き行っており、ほぼ順調に成果を残しながら進んでいる。特に表面酸化過程等を詳細に解明できた。また、物質材料研究機構の倉橋グループとの共同研究として、銅合金表面上における初期酸化過程に酸素分子の立体異方性がどのように寄与するかを明らかにする実験を始めたことにより、遷移状態への分子の立体化学的寄与を理解する上で研究が格段に進んだ。 また、開発してきている2種類の分子線装置を用いて、排気ガス処理触媒のモデル表面であるPtおよびRh表面にCO分子を吸着し、そこにNO分子を照射し起こる反応の遷移状態について、29年度に調べる予定で、装置の細かい調整を進めることができた。さらに高速レーザー分光を行うための準備を研究協力者と進め、予備実験を開始し、その成果について学会発表を予定しており順調に進んでいる。 反応の遷移状態を解明するためには、理論計算により実験結果のシミュレーションを行うことが必要となるが、これについては、予備実験で得られた様々なデータを研究分担者と一緒に理論解析を進め、いくつかの論文にまとめた。 以上、今後遷移状態の解明に展開するための素地を固めたと考えており概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
開発してきている2種類の分子線装置の調整を行い、排気ガス処理触媒のモデル表面であるPtおよびRh表面にCO分子を吸着し、そこにNO分子を照射し、反応の遷移状態を調べる。放射光施設にある同様の仕様の装置を用いて、酸素分子、エチレン分子および塩化メチル分子の超熱分子ビームを発生し高分解能X線光電子分光により、反応過程を調べる研究は今後も引き続き行う。また、物質材料研究機構の倉橋グループとの共同研究として、銅合金表面上における初期酸化過程に酸素分子の立体異方性がどのように寄与するかを明らかにする実験を行い、遷移状態への立体化学的寄与を解明する。 また29年度には、高速レーザー分光を行う実験を研究協力者と進め、遷移状態を解明する実験を進める。 反応の遷移状態を解明するためには、理論計算により実験結果のシミュレーションを行うことが必要となるが、これについては、予備実験で得られた様々なデータを、引き続き研究分担者と一緒に理論解析を進める。また排気ガス処理触媒のモデル表面であるPtおよびRh表面にCO分子を吸着しNO分子を照射し反応させた際の、反応の遷移状態を理論計算により調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2台の分子線装置の調整にやや手間取り、部品や機器の最終仕様の検討が遅れたために、使用する予定の部品製作と機器製作が29年度に延期となり残額が生じている。また、その影響で実験補助者の雇用予定が遅れていることも残額が生じている要因である。
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次年度使用額の使用計画 |
2台の分子線装置の調整を急ぎ、使用する予定の部品製作と機器製作を29年度のなるべく早い時期に行い研究を進める。また、短期で実験補助者の雇用を進める。これらの遂行のため、29年度請求助成金と合わせて、残額を使用する。
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