研究実績の概要 |
本研究では有機化学・分析化学・計算科学が連携し、緊密に情報を共有することで、従来ブラックボックスである「炭素―水素結合活性化反応の本質」を明ら か にし、「炭素―水素結合活性化反応の遷移状態制御」と「安価ですぐれた触媒を設計するうえでの指針確立 」を目標とする。平成31年度も、平成30年度まで に得られた結果を基に、炭素(sp3)―水素結合活性化反応を測定対象とし、「均一系触媒系」(N. Chatani et al, J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 12984.)と、 「ナ ノ粒子触媒系」(M. Arisawa et al, Adv Synth. Catal. 2014, 356, 1361.)の両方の系について、律速段階の決定・塩基および溶媒の役割について検討し た。また、これらの反応機構を決定するため、得られた結果を詳細に解析し、計算結果の精度を上げる為の工夫を進めた。また、実験系においては、計算化学を 進める上で必要な対照実験を展開するとともに、ナノ粒子触媒によ る炭素―水素結合活性化反応の新たな例を見出しており、順調に推移している。さらに、こ れらナノ粒子触媒の酸化数や粒子系についても、分析研究を展開し、酢酸の果たす役割について論理的に考察することができた。 均一系金属触媒および金属ナノ粒子触媒の炭素―水素結合活性化反応における遷移状態について検証を重ね、良好な研究成果が得られているが、当初の予想に反し、金属ナノ粒子触媒系の化学実験・計算に予想上の時間を要することが明らかとなっている。
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