研究実績の概要 |
昨年度に得られた、活性炭担持ロジウム触媒によるキノリンの水素化における希土類トリフラートの添加による位置選択性の制御についてさらに精査した。精密に反応系を検討した結果、希土類トリフラートがロジウム-活性炭触媒中に含まれる水によって分解されて生じるトリフルオロメタンスルホン酸が反応の選択性に直接関与していることがわかった。 この成果を基盤にして、様々な光学活性な置換基をもつスルホン酸を共触媒として、5-フェニルキノリンの不斉水素化を試みた。まず、入手容易な光学活性10-カンファースルホン酸を添加して、各種担持金属触媒によるキノリンの水素化を試みた。いずれの触媒を用いた場合でも、水素化は円滑に進行し5-フェニル-1,2,3,4-テトラヒドロキノリンが良好な収率で得られたが、生成物はいずれもほぼラセミ体であった。文献既知の手法を使って光学活性2,2'-ビナフトールから、ヒドロキシ基のチオカルバメート化、熱的なNewman-Kwart転位、KOHによる加水分解、過酸化水素によるスルフィドの酸化によって2,2'-ビナフチルジスルホン酸を合成した。しかし、このキラルスルホン酸と活性炭担持ロジウム触媒を用いてキノリンの水素化を試みたが生成物はラセミ体だった。今後、3および3'位に置換基を持つキラル2,2'-ビナフチルジスルホン酸を合成し、その不斉誘起能を評価し、高エナンチオ選択性を示すキラルブレンステッド酸触媒を見出す予定である。
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