研究課題
本研究課題では、網羅的にIRCや遷移状態を求めるのではなく、核の量子揺らぎも含めた有効自由エネルギー超曲面における1.量子論的遷移状態および量子論的反応経路を新たに構築・提唱する。特に初期経路依存が小さい探索手法としてストリング法、さらにはそれを発展させた手法を開発し、効率的なシステム実装も行う。本手法により、様々な反応系における2.量子論的遷移状態の探索および遷移状態制御による設計指針を与え、実験グループにフィードバックする。本研究課題は、量子論的遷移状態の確立を第一の目的にして実験グループとの協働による具体的な理論計算を実現する。本年度は一昨年度に続き、以下の項目を実施した。1.量子論的遷移状態および量子論的反応経路の確立: (1A)ストリング法の実装 人為的パラメータを減らすことのできるストリング法を実装することで、NEB法に比べてより効率的に反応経路が求まることを確認した。多成分系分子軌道法および多成分系密度汎関数法に導入することにより、分子内水素転移反応や水素引き抜き反応に対する量子論的遷移状態を求めることに成功した。 (1B)効率的計算手法の導入 周期境界モデルによる電子状態と、吸着サイトにおける水素の量子効果を考慮した部分的な高精度量子化学計算を組み合わせた、平面波局在混合基底系ONIOM計算手法を開発・実装中であり、現在テスト計算を実施している。2.量子論的遷移状態の探索および遷移状態制御による設計指針: 多成分系分子軌道法および多成分系密度汎関数法を用いることにより、分子内水素転移反応や水素引き抜き反応に対する量子論的遷移状態を探索することに成功した。金属クラスターへの水素吸着シミュレーションの計算も実施しているところである。
2: おおむね順調に進展している
NEB法やストリング法を多成分系分子軌道法および多成分系密度汎関数法に既に導入し、既存プログラムにも加えることに成功した。水素結合が絡むクラスター等、既に多数の具体的計算を実施し、量子論的遷移状態を求めることを可能とした。既に論文として受理されており、おおむね順調に進展している。
さらなる理論開発およびプログラム実装だけでなく、数多くの応用計算も実施していきたい。
本研究課題を実施するにあたり、当初、初年度から博士研究員を雇用する予定であった。しかしながら初年度採用予定の博士研究員が、就任直前に就職先が決定してしまい、初年度に本研究課題遂行のための適切な人材をみつけることができなかった。昨年度(二年目)、新たにのべ2名の博士研究員(本学の称号は特任准教授、および特任助教)を雇用したが、初年度からの繰越金が未だ半分程余っており、次年度に繰り越したい。
平成29年度、引続き1名の博士研究員(本学での称号は特任助教)を雇用している。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (18件) (うち国際共著 2件、 査読あり 18件、 謝辞記載あり 17件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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