研究実績の概要 |
低分子とポリペプチドとの反応などの様々な生体分子関連化学反応の創製は、化学反応の遷移状態制御のメカニズム解明において非常に重要である。これまでに、低分子とポリペプチドとを反応させるための様々な機能性タンパク質が開発されてきているが、その分子量の大きさから更なる人工改変は難しいと言う問題点が存在する。 これまでに、数十兆種類という非常に多様(diverse)なペプチドタグライブラリーからのウルトラハイスループットスクリーニングを可能にする無細胞系の分子進化により、低反応性小分子に共有結合するペプチドタグであるタンパク質ラベリング用ペプチドタグを創製する新システム(DIVERSEシステム:Directed In Vitro Evolution of Reactive peptide-tags via Sequential Enrichementシステム)を開発し、共有結合で非酵素的にラベリングするペプチドタグの完全de novo創製を達成してきた。そして、創製したペプチドタグを用いて、様々な蛍光プローブによるタンパク質ラベリングや生細胞内タンパク質のバイオイメージングへの応用を実証してきた(Kawakami et al., Chemistry & Biology, 22, 1671-1679 (2015))。 本年度は、生体直交性化学反応を利用して、遷移状態を制御するための新たな機能性人工生体分の開発を推進した。まずはBoc2Oを用いて出発物質のBoc保護を行なった。次に、酸塩化物を経由してエステル化へと活性化を行なった。それから、酸による脱Boc化を行なった。最後に生体直交性化学反応のための反応を行なった。目的化合物の同定はNMRにより行なった。その結果、遷移状態を制御するための新たな有機化合物の反応の確認に成功した。
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