研究課題/領域番号 |
15KT0073
|
研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
西山 賢一 岩手大学, 農学部, 教授 (80291334)
|
研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2020-03-31
|
キーワード | 生体膜 / リポソーム / 自発的膜挿入 / MPIase / 糖脂質酵素 |
研究実績の概要 |
本研究では、生体膜と(プロテオ)リポソームとの差異に解明し、生体膜を創成することを目的として研究を進めている。特に(1)リポソームでは 膜タンパク質が無秩序かつ自発的に膜挿入する、(2)リポソームは機械的強度、化学物質に対する耐性度が膜小胞より著しく低いという点に着目して、その分子機構を明らかにし、生体膜を人工的に創生するための基盤となる知見を得ることを目的とする。 28年度は、生体膜創成のための予備的データの取得の完了を目指し研究を進めた。その結果、(1)に関する研究では、コレステロールが無秩序な自発的膜挿入を抑制する効果があることを見出した。コレステロールを発現しない大腸菌ではジアシルグリセロールが自発的膜挿入の抑制効果をもつことをすでに報告している。それに対して、真核生物ではジアシルグリセロールはセカンドメッセンジャーとして機能するため、替わりにコレステロールが自発的膜挿入の抑制に関与している可能性が考えられる。 27年度から着目しているF0F1 ATPaseのc サブユニット(F0-c)の膜挿入については、ジアシルグリセロールにより自発的膜挿入が抑制されないといった特異な点がいくつか報告されていた。注意深く調べたところ、酸性リン脂質と相互作用したF0-cはプロテアーゼ耐性の構造に変化するため、膜挿入活性と区別できていないことが判明した。プロテアーゼ耐性の構造は界面活性剤存在下でも変化しなかったため、膜挿入と区別できるようになった。この系を用いて解析すると、F0-cの膜挿入は糖脂質酵素MPIaseに依存し、YidCにより促進されることが判明した。したがって、F0-cの膜挿入は、多くの膜タンパク質と同様の性質を示した。 (2)に関しては、高濃度MgやPEG等の化学物質がリポソーム凝集に及ぼす効果を定量的に評価する系の構築したため、リポソームに強度を与える物質の抽出を開始し、その精製を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
F0-cの膜挿入機構が解明できて論文発表が終了した。リポソームに強度を与える物質の抽出も予定通り進行している。一方、コレステロールによる自発的膜挿入抑制に関する論文の受理が遅れているため「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)に関する研究では、コレステロールの効果に関して、小胞体膜を模したリポソームを調製し、この効果が生理的条件を反映していることを証明する。 (2)に関する研究では、リポソームに強度を与える物質の精製を進め、検索・同定を開始する。精製が完了したら、その物質の構造解析を開始する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
F0F1-ATPase cサブユニット(F0-c)の膜挿入機構の解析が予定より早く完了し、論文も受理され、残金が生じたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
リポソームに強度を与える物質の精製に関して、より多くの条件を検討するための消耗品等に使用する。
|