研究課題/領域番号 |
15KT0078
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
津留 三良 大阪大学, 情報科学研究科, 助教 (80594506)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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キーワード | ゲノム進化 / 進化生物学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、変異の有害作用を防ぐ原理を発見するため、この高変異性大腸菌を植え継ぎ実験によって適応進化させ、変異に対して頑強なゲノム配列の形成過程を明らかとすることである。変異の多くは、生物の生存に有害な作用を及ぼしている。従って、変異に対して頑強なゲノム配列の特徴や設計指針を理解できれば、有害な作用を防ぐことが可能になると期待される。そのために、本研究では、高変異性大腸菌を構築し、植え継ぐ過程で発生する目的変異体(高い変異率でも増殖能力が落ちにくい変異体)を進化実験によって取得し、その頑強性のメカニズムを解明する。 本年度は、大腸菌の変異修復遺伝子を欠損させて様々な高変異性大腸菌の構築を試みた。その結果、野生型の1000倍も高い変異率を持つ高変異性株の取得に成功した。さらにこの株は、その高い変異性ゆえに増殖速度が野生株よりも著しく遅いことを実験によって確かめた。この株を用いて、試験的に進化実験を行った。その際、様々な培養条件で培養し、変異率と変異スペクトルが培養条件にどの程度依存するかを確認し、ゲノム上での変異箇所を解明する解析技術を確立した。これらは、本格的に実施する進化実験(および得られる変異体の解析)に必要な技術である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定した実験材料(高変異性大腸菌)と実験条件を予定していた期間内に構築できたため。また、追加の解析や、実験材料の不備の修繕も最小限に抑えることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、取得した高変異性大腸菌を継代培養し、早い増殖速度をもつ変異体を選択していく。逐次得られる進化株について、高変異率状態での増殖速度と低変異率状態(変異修復遺伝子を再導入することで得られる)での増殖速度を比較する。変異率の高低で増殖速度が、進化の過程で変化しにくくなっていくことを確認する。 さらに、変異に対する頑強化を獲得した個体のゲノム変異を解読する。遺伝子毎の配列を解析し、遺伝子内の同義置換変異獲得確率の増加・遺伝子長の短縮・偽遺伝子化・必須遺伝子数の減少・遺伝子重複やゲノムの倍加などの大きな構造変化など、頑強性獲得の上で重要と考えられている配列変化を明らかとする。また、細胞内反応パスウェイ(代謝パスウェイや遺伝子発現制御)と合わせて解析し、変異に対する頑強性獲得に伴う生理状態の変化を推定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年12月に変異率抑制DNAの開発及び変異率測定をした結果、開発した抑制DNAの予期せぬ不備を発見したため、不備の修繕を行う必要と動作確認を追加で実施する必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
不備を修繕し、動作確認が済んだ抑制DNAを用いて、予定していた変異蓄積実験の実施に必要な物品費として使用する。
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