研究課題/領域番号 |
15KT0080
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
市橋 伯一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20448096)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2020-03-31
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キーワード | 協力 / RNA / 複製 / 進化 |
研究実績の概要 |
本年度では、昨年度までに作成したnucleotide diphosphate kinase (ndk)をコードしたRNAをもともとのRNA複製酵素をコードしたRNAと協力的に複製するシステムについて、どういう条件でなら継代可能かを理論的、実験的に調べた。その結果、重要なのは平均RNA濃度であることを見出した。RNA濃度が高すぎる場合には寄生体RNAが出現してしまい、協力的RNA複製が持続できない。一方でRNA濃度が低すぎると2つの協力的RNAが出合うことが難しくなり、やはり複製ができない。したがって、中間的な濃度でのみ協力的なRNA複製が持続することを見出した。さらに中間濃度で継代を続けていくと、RNA複製酵素をコードしたRNAではその大部分が協力性を失うのに対し、ndkをコードしたRNAの方は、半分以上のRNAが協力性を維持しており、さらにそのうち一部はよりndkの発現を上昇させていた。すなわち、この一部のRNAはより協力的になっていた。いままでの理論研究からは世代を重ねると協力性を失ったものが選択されることが多いと言われていたが、この結果は必ずしもそうではないことを示している。この原因のひとつは、ndkというのが相手の複製だけではなく、自身の複製にも貢献するためではないかと考えている。いままでは、協力性というと相手だけを助けて自分の複製は助けないというモデルが考えられていたが、分子の仕組みを考えるとそのような仮定は考えにくく、本研究のように相手も自分も同程度に助けるという方がむしろ自然である。このような“自然な”仮定の下では、協力性は今まで考えられていたよりも起こりやすいのかもしれない。以上の結果は、論文にまとめ無事に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では5年をかけて協力的な複製の進化実験をする予定であったが、4年目ですでに進化実験をある程度完了することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
さらに協力的なRNA複製を続けることにより、協力的複製が進化によりどう変わっていくかを調べる。より安定になっていくか、それともより不安定になっていくのか、どちらの可能性もありうると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の異動があり、実験室の立ち上げ等で研究ができない期間が生じたため、消耗品等の購入量が減少したため。 現在、ようやく実験室が立ち上がったため、残りの研究計画(進化実験の継続と、配列、生化学解析、協力的RNA複製の安定性解析)について、異動先の東京大学で行う予定である。
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