昨年度までにnucleotide diphosphate kinase (ndk)をコードしたRNAをもともとのRNA複製酵素をコードしたRNAと協力的に複製するシステムについて、どういう条件でなら継代可能かを理論的、実験的に調べ、重要なのは平均RNA濃度であることを見出した。本年度では、この2つのRNAが融合し、1本のRNAへと進化するかどうかを調べた。現状まで数か月にわたるうえつぎ実験を行ってきたが、いまのところ融合している様子は見られていない。そこで、計算機シミュレーションをもちいて、どういう場合に融合したRNAが選択されるかを検証し、反応液の混ぜ方が重要であることを見出した。さらに実験としては、人為的に融合させたRNAを構築し、上記のシミュレーション結果を検証可能にする材料を作成した。実際にこのRNAをうえつぎ選択されるかは将来の課題である。このRNAの融合については本年度で結論は出ていないが、本研究の当初の目的は2つの協力的なRNAがいかに維持されるかどうかであり、その点はすでに昨年度までで完了しているため当初の目的は達成されている。本年度の研究成果は当初の目的よりも発展した内容であり、将来の研究発展の布石となる。 今後の研究の方向性としては、構築した融合RNAと分割されて元々のRNAを同時にうえつぎ、シミュレーションで予想された条件で融合RNAが選択されるかを検証する。もし選択される条件がみつかれば、その条件で分割されたRNAを長期うえつぎすると自発的に融合RNAが進化してくるかどうかを検証したい。
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