研究課題/領域番号 |
15KT0083
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研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
木村 暁 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 教授 (10365447)
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研究分担者 |
舟橋 啓 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70324548)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 線虫 / 胚発生 / 細胞分裂 / 細胞骨格 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は動物細胞の細胞分裂を再現する力学モデルを構築し、そのモデルの妥当性を実験的に検証することである。実験には線虫C. elegansの初期胚を主に用いる。研究代表者はこれまでに、動物細胞の細胞分裂に伴う空間的に動的な過程である(i)細胞質流動、(ii)細胞核の中央配置、(iii)染色体の分配(紡錘体の伸長)、および(iv)細胞質分裂、に関してそれぞれ力学モデルを提案してきた。本研究では、これらの力学モデルを発展させるとともに、異なる過程を統合する統一的なモデルの構築を目指して研究を進めている。力学モデルの構築は、研究分担者である舟橋啓博士(慶應義塾大学)とともに進めた。 (1)新たなタイプの細胞質流動のモデル化:新たなタイプの細胞質流動として、流動方向があらかじめ決まっておらず自己組織的に形成・変化する流動の解析を行い、力学モデルの構築に成功した(Kimura K. et al., Nat Cell Biol, 2017)。 (2)細胞分裂に伴う細胞配置のモデル化:細胞分裂に伴って形成される2つの姉妹細胞はお互い、あるいは周囲の細胞と力を及ぼしながらその配置を決める。その配置機構について実験観察から新たな力学モデルを構築した(Yamamoto & Kimura A., Development 2017)。 (3)「核の中央配置」と「紡錘体の伸長」に関わる微小管の力学モデルの統一化:この両者のプロセスは共に微小管によって駆動されるが、同じ枠組みのモデルで説明できるかどうかについて解析を進めたところ、微小管の角度に関する条件を変えることで統一的に説明可能であることが示唆された。 (4)「細胞質流動」と「核の配置」を統合するモデルの構築:細胞質(流体)と核(剛体)の動きの関連を検討するためのモデルの枠組みを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象として設定していた(i)細胞質流動、(ii)細胞核の中央配置、(iii)染色体の分配(紡錘体の伸長)、および(iv)細胞質分裂、について新たなモデルを実験結果に基づいて提案するとともに、統合化も進んでいることから順調に進展していると判断した。研究の結果、力学モデルから新たな示唆が得られ、その実験的検証のために、研究期間を延長し、追求することにした。
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今後の研究の推進方策 |
力学モデルから得られた示唆を、細胞の変形実験を活用して検証する。細胞の変形の方法については、報告者が確立した方法(Yamamoto & Kimura A. 2017)を用いる。数理モデルと実験の比較からモデルの妥当性を検証し、結果を論文発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で構築した力学モデルから新たな示唆が得られ、実験的な検証を行った上で論文発表することが妥当であると判断した。このために必要な実験系の構築(線虫株の樹立・観察・データ解析)を行うために、機関の延長を申請し、承認された。これによりH30年度にも実験を行うためH29年度までの使用を制限し、H30年度の実験の遂行に充てることにした。具体的には、実験に必要な消耗品と、実験遂行のための技術補佐員の雇用に予算を使用する。
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