研究課題
動物細胞の細胞分裂の空間的制御には、中心体の配置が重要な役割を果たしている。研究代表者らはこれまでに、中心体が「(細胞核とともに)中央化」した後に「(紡錘体極として)伸長」するといった一連の過程を説明づける力学モデルの構築を行ってきた。これらの力学モデルの妥当性を検証する目的で、通常は2つの中心体を、遺伝子変異体を用いて3つにした細胞を観察し、力学モデルでどこまで説明できるか検討を加える研究を行った。線虫C. elegans胚において3つの中心体は、中心体が2つの時と同様に分裂前期までに細胞中央に移動する。ここまでの挙動は中心体2つを説明する力学モデルで説明可能であった。次に、核膜崩壊後、3つの中心体を有する細胞は、三角形の紡錘体を形成し、この紡錘体の伸長(三角形の各辺の伸長)の後に細胞分裂を行う。この紡錘体の伸長過程も、中心体が2つの際に形成される二極性紡錘体の伸長における力学モデルを元に説明できることを示した。一方で、三角形の紡錘体が当初、細胞の長軸に対してどの角度に形成されるかが、その後の分裂の様式(2つに分裂するか、3つに分裂するか)に重要であることを研究代表者らは見出した。そして、従来の力学モデルで考慮した要素に加えて、中心体の大きさの非対称を仮定すると実験で観察された角度分布を再現できることを思いついた。この新たな仮定の妥当性を実験的に検証するために、中心体の大きさを測定したところ、確かに中心体の大きさに非対称性が存在することを見出した。以上の結果は、研究代表者らが2つの中心体を有する細胞に対して構築してきた力学モデルが、3つの中心体の挙動も説明できる、普遍性のあるものであることを示している。さらに、このモデルを使うことによって、遺伝子変異によって誘導した3つの中心体には非対称性があり、そのことが紡錘体の角度や細胞分裂の様式に影響を与えていることを発見できた。
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Molecular Biology of the Cell
巻: 30 ページ: mbc.E19~01-0075
10.1091/mbc.E19-01-0075
https://www.nig.ac.jp/nig/ja/2019/04/research-highlights_ja/rh20190304.html
http://cellarchlab.galaxy.bindcloud.jp/home_jp.html