研究実績の概要 |
上皮極性に関与するタンパクの細胞内分布の定量法は免疫蛍光染色、共焦点顕微鏡による画像取得、Image Jによる細胞表層における蛍光強度の定量という手順が確立した。上皮細胞はアピカルとバソラテラルという二つの膜ドメインに分けられ、その境界近くにはアピカルタンパク、境界タンパク、バソラテタルタンパクが集積し、まとまって挙動することから、なんらかの複合体を作っているという印象を得ている。その過程で、蛍光タンパク付きのLifeActによるアクチン繊維のライブイメージングを行うと、二つの膜ドメインの境界が非常にダイナミックに動いていることがわかった。これも極性形成、極性の維持の機構に本質的に関わると考えられ、数理モデル作成のためのデータをさらに取得しつつある。 上皮極性に関与する遺伝子をゲノムワイドのsiRNAスクリーニングによって明らかにしようとしているが、18,000種類ほどの遺伝子のノックダウンと上皮極性に対する影響について一通りの結果が出た。境界の長さやアピカルドメインの細胞における位置を指標にして画像解析を自動で行わせた。その結果からある数値以上のものに絞り込み、さらに新たに別の配列のsiRNAを用いて二次スクリーニングを行い、偽陽性を排除した。その結果として、既知の遺伝子以外のものも多く見つかってきている。低分子量Gタンパクの活性制御因子や、小胞輸送に関わる因子などである。これまで極性化因子としては注目されていなかったものなどについて、その役割を探ることを始めている。
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