研究課題/領域番号 |
15KT0093
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
山下 東子 大東文化大学, 経済学部, 教授 (50275822)
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研究分担者 |
工藤 貴史 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (00293093)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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キーワード | 新湊漁協 / 桃の浦かき生産合同会社 / 遠洋漁業者 / 三厩漁協 / 平内漁協 |
研究実績の概要 |
本年度は高齢漁業者ヒヤリングと研究成果発表(学会報告)を行った。ヒヤリングは富山県新湊漁協(9月)、宮城県遠洋漁業引退者・桃の浦かき生産合同会社(10月)、青森県平内漁況・三厩漁協(11月)、愛媛県久良漁協(12月)、北海道苫小牧漁協(3月)で概ね80歳以上の高齢漁業者・引退漁業者へのヒヤリングである。昨年度から経験済みであるが、引退漁業者との面談が難しい。漁協を通じて依頼した時点では、漁協側は心当りを思い浮かべて引き受けてくれるが、いざ正式に依頼すると応諾しなかったり、応諾しても当日欠席したりした。この事実自体が貴重な情報であるため、10月に行った地域漁業学会大会での山下の研究成果報告にはこの事を盛り込んだ。我々は「浜の会社」を作る事で漁業者相互間の業務融通を計り、それによって就労を続けたい高齢漁業者がいつまでも働き続けられる環境を確保したいと考えている。そのために先進的な法人化の事例を探している。今年度は山下・工藤が一緒に有名事例である桃の浦を訪問した(10月)ほか、日本農業市場学会に参加して農業における法人化の事例収集を行った(7月)。この研究成果は工藤が水産海洋学会で行った報告に盛り込まれている(11月)。 ヒヤリングの成果を概括すると、高齢になっても働き続けている漁業者は家族(息子や親戚)との相乗りが多い。単独操業者の多くは家族(夫人、子供など)から引退勧奨を受けている。そのためにいったん引退した漁業者が、再開を決意し船を修理中という事例もあった。引退した漁業者の引退事情は、本人の病気・けがに加えて二人乗りの相方の病気・けがによるやむを得ない廃業があった。これらは環境整備により漁業継続が可能である。相方は近隣で斡旋できるし(しかし漁協は仲介業務を行わない)、杖に頼っている引退漁業者の中にも、船に乗せてくれれば、漁獲物の仕分けはできる、と述べる者がいたからである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通り進展している。今年度ヒヤリングを申し入れていた数漁協(三重県志摩、山口県光、長崎県対馬)が来年度に延期になった。漁業センサス2013を用いたデータ分析については、工藤は計画通り進んでいるが、山下は個票の取得が難航していてまだ分析には至っていない。これらは平成29年度に実施する予定である。研究成果報告の論文化についても、工藤は一本「その他」に掲載したが山下については来年度へ延期となった。地域漁業学会誌への投稿論文が修正ののち掲載可となっているため、平成29年度前半に出版される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は最終年であるため、積み残した実地調査に加えて研究成果報告を行っていく予定である。国際学会では2件の報告を予定している(5月African Great Lakes 2017、9月日本水産学会国際大会)。国内学会では2件のシンポジウム報告(5月漁業経済学会大会、工藤、10月地域漁業学会大会)を予定している。後者は山下・工藤が主宰するミニシンポとし、韓国等からの発表者を招へいする予定である。これらの研究成果を踏まえて、論文の執筆・発表、および将来的には図書の刊行を視野に入れている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた調査出張を、受け入れ先漁協との日程調整上、次年度に繰り越したため生じた残金である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に予定していた調査出張を平成29年度に実施する。
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