研究課題/領域番号 |
15KT0094
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
野村 俊明 日本医科大学, 医学部, 教授 (30339759)
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研究分担者 |
樫村 正美 日本医科大学, 医学部, 講師 (00550550)
北村 伸 日本医科大学, 医学部, 教授 (40161492)
山本 卓 法政大学, 法学部, 教授 (40434203)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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キーワード | 高齢者 / 反社会的行動 / 高齢受刑者 / 迷惑行為 |
研究実績の概要 |
地域包括を対象とした「高齢者の迷惑行為」に関するヒヤリングを実施、これをまとめて第31回日本老年精神医学会および第6回日本認知症予防学会で発表した。高齢者による迷惑行為が持続する背景として、本人の認知症や精神障害と地域からの孤立が大きな要因であることが示された。現在、学会誌への投稿準備中である。また、保健所を対象として高齢者の迷惑行為や反社会的行動に関する事例収集を行った。約160施設を対象にアンケート用紙を送付し、約50通の回答を得た。現在、これをデータ処理中である。 高齢受刑者を対象とした調査研究は、新規入所者のプロフィールに関するデータを継続的に収集中である。あわせてMMSE施行後、1年後・2年後・3年後の転帰調査を行っている。また、この調査に含まれていなかった同居家族・経済的困窮度などの要因を含めた調査を別途施行した。これらのデータは、今年度の第32回に本老年精神医学会で発表予定であり、さらに論文化する予定である。平成27年度に行った日本矯正医学会シンポジウムの発表内容は、共同演者によりまとめられて原著論文として学会誌「矯正医学」に掲載された。なお高齢受刑者の認知機能検査については、法務省矯正局校正支援室の依頼を受けて、複数の刑事施設で認知機能検査の思考法や調査方法に関して講義・講演を行う予定である。 社会福祉や海外事情との比較検討については、継続的に行っている分担研究者・研究協力者とのミーティングに分担研究者である山本卓氏(法政大学)を招きレクチャーを受けた。欧州では、高齢者による軽犯罪はダイバージョンが行われることと刑罰の意義に対する考え方が異なるため、わが国のように高齢者が受刑に至ることがほとんどないことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主題である「高齢者の反社会的行動」の実態にアプローチする刑事施設での調査・地域包括を対象とする調査・医療施設を対象とする調査がすべて順調に行われている。(医療施設は討議の上対象を保健所に変更した)これらの調査により反社会的行動の類型化や生活背景などが把握されつつあり、その成果は複数の学会で発表された。最終年度も学会シンポジウムや学会誌での特集が組まれており、研究代表者や分担研究者が研究成果を発表する準備が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
保健所を対象とした調査のデータをまとめ、地域包括センターを対象としたヒヤリングの調査と併せて「迷惑行為」「反社会的行為」の類型化と背景の把握、ついで対応の指針を検討する。現時点では、三鷹地区あるいは川崎地区の地域包括センターと連携して「迷惑行為」や「反社会的行動」への地域での具体的対応―刑務所に入るに至らないようにする対応の指針を検討したい。このために地域包括でのミーティングに積極的に参加して交流を深めることになっている。 高齢受刑者を対象とする研究に関しては、刑務所におけるデータ収集を継続してデータ数を増やすともに、転帰研究をまとめて学会発表や論文化を図りたい。 また平成29年度は海外視察を行って主に欧州の状況を把握してわが国でどうして高齢者に迷惑行為がこれほど社会的関心事になり、刑務所に高齢受刑者が多いのかを検討する。 これらの調査や検討をまとめたものは、第7回認知症予防学会でシンポジウム「高齢者の反社会的行動を考える」を開催して発表する予定である。また老年医学雑誌第28巻第11号にて「高齢者の反社会的行動」の特集が組まれており、いずれも研究代表者や分担研究者が講演・執筆することになっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年3月に予定していた海外(オランダ)視察を研究代表者の学内業務のためとりやめざるを得なかったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究は海外事情との比較検討を重点項目のひとつとしており、当初より予定していた海外視察を行う。現在フィンランドおよびイギリスへの視察を計画しており、国内学会出張費用などを併せて、当初予算は執行する予定である。
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