研究課題
今年度は過去2年間実施した本研究課題において認められた問題点を解決するため,質問紙調査と実験研究を1つずつ実施した。具体的には下記のとおりである。1.「これまでの人生においてもっとも心に残っている音楽」として定義した「パーソナル・ソング」を過度に聴取している大学生の感情的Well-beingが低い傾向が認められた。より詳細に分析すると,こうした音楽を過度に聴取している大学生は日常的に落ち込んだ状態から覚醒度を上げるために音楽を聴いている傾向が認められた。このことから,「音楽聴取」と「人間のQOLおよびWell-being」を媒介する一つの重要な要素として「気分調整」があるという仮説を立てた。大学生に対する音楽による気分調整を測定する尺度を構成し,日本発達心理学会第29回大会で発表した。現在,この尺度構築に関する論文を投稿している段階である。その後,これを高齢者に拡張し,日本人全体に適用可能な「音楽による気分調整尺度」を構築することを目指す。2.「音楽を集団で演奏することで,高齢者の心理的・生理的ストレスが低下する」という仮説を立て,実際に特別養護老人ホームにおいて10週間にわたる介入調査を実施したが,データサンプルが少ないため,ビデオ分析等によるより詳細かつ定性的な分析を進める必要があるという結論に至った。代替的な定量的データとして,地域の公民館において余暇活動としてコーラスを定期的に実施している高齢者を対象に,コーラス前後の唾液中コルチゾール(ストレスホルモン)を測定した。対照群として,定期的に囲碁を行っている高齢者に対しても同様の調査を行った。その結果,コーラス後,高齢者の唾液中コルチゾールが低下することが示されたことから,集団で歌をうたうことが高齢者のストレスを軽減することが確認された。また,その効果は,社会的なQOLが高い高齢者により顕著であることも示された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 1件)
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