研究実績の概要 |
最終年度(平成29年度)は成果発表を中心に行った。 免疫組織化学染色された乳がんの顕微鏡画像から計算したパーシステントダイアグラムについて、パーシステントホモロジー指数(Persistent Homology Index, PHI)を定義し、病理医の目視観察による画像診断指標と比較した。我々が導入した PHI は、従来の指標である標識率と整合的であり(統計的に有意な順相関がある)、ホルモン療法適用基準に対する核グレード分類においては、標識率よりもよい正答率を確認した。成果を連携研究者の病理医らとの欧文共著論文として Scientific Reports 誌に発表した。応用トポロジーの国際会議(Applied Argebraic Topology 2017)において口頭発表、また日本応用数理学会2017年度年会において、正会員主催オーガナイズドセッション「計量 (デジタル) 病理学のフロンティア」を企画し、4名の講演者を招待して座長を行った。計算ホモロジーの適用事例を増やすことも本研究の目的である。マイクロCT画像から再構成する3次元構造の分析については、1次元、2次元ベッチ数と0次元ベッチ数との比を分類指標として定義し、その数学的な基礎を与えた。骨微細構造データに適用し、その結果を連携研究者の整形外科医らとの欧文共著論文としてまとめ、現在、投稿中である。日本数学会2018年度年会では、口頭発表を行った。高分子共重合体系のミクロ相分離モデルの数値シミュレーションについては、温度変化に対する3次元構造変化 (ラメラ状からオニオン状へ)を再現することに成功し、実験における観察結果と比較した。成果を実験研究者を含む材料科学分野の研究者らと英文の共著論文としてまとめ, 国際学術誌に発表した。
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