韓国高等科学院の三浦真人氏と共同で行っている、多次元尺度構成法(multidimensional scaling)に関する研究を継続した。特に、距離に関する4次式で与えられる二重井戸型ポテンシャルを用いた非線形の多次元尺度構成法を等距離空間に適応して得られる多体問題が、2球デザインを停留点として持つことを証明した。自然数tに対し、t球デザインは、球面上の有限個の点の配置で、t次以下の多項式の球面全体における積分がそれらの点における値の和で与えられるようなものとして定義される。これは、符号理論に由来する概念の球面上での類似物である球コードと併せて、1977年にDelsarte-Goethals-Seidelによって導入された概念であり、積分の有限和による表現・近似や、それと深く関わる直交多項式や調和多項式との関係を超えて、数学や工学の様々な分野との結びつきを持つ極めて興味深い分野をなし、数多くの研究が行われてきた。我々の結果は2球デザインに多体問題の停留点としての新たな解釈を与える。また、ポテンシャルとして4次式ではなく、冪指数にパラメーターを持つものを用いて定義される多体問題に対して数値実験を行うことで、2次元の場合に、パラメーターの空間が4つに分割され、パラメーターがそのどれに属するかに応じてポテンシャルの最小点の様子が大きく違う(平面上に分布したり、円周上に均等に分布したり、2球デザインになったり、複数の点が衝突して正三角形の頂点に分布したりする)という予想を定式化した。 また、名古屋大学多元数理科学研究科の伊藤敦氏及び韓国高等科学院の三浦真人氏と共同で行っている、代数ビジョンにおける射影再構成問題(projective reconstruction problem)の論文の改訂を行い、Canadian Mathematical Bulletin誌に受理された。
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