研究課題
脳の活動は一つの脳領域に留まらず、他の脳領域へ伝搬して行く。本研究の目的は、その伝搬経路を全脳の神経活動から推測し、伝播経路に規則や特徴が存在するか解明することである。具体的には脳活動の開始部位と終着部位とが明確な場合に、その間の脳回路を神経活動が並列にあるいは直列に伝播するのかといった伝搬経路の性質を明らかにする。近年実現したマウス用fMRIと、脳海馬神経の活動を光照射で操作可能な遺伝子改変マウスとを組み合わせて、研究代表者は日本で初めてマウスの光遺伝学的fMRIに成功し(Takata et al. PLoS One 2015)、海馬光活性化時の全脳応答を世界で初めて捉えた。海馬光活性化によって動物が走り出すことから(Tanaka et al. Cell Reports 2012)、神経活動は海馬から大脳運動野へ伝播したと想定できる。しかし従来のfMRI解析手法ではこの経路を抽出できなかった。そこで脳細胞間の結合推定法(Nakae et al. 2014 PLoS Comput Biol)で全脳を対象とした伝達経路推定を構築する。そして深層学習で開発された正則化法であるdropoutを、ニューラルネットではなく伝播経路推定に初めて適用し、経路数の指数的爆発へ対処することを提案した。実験においては前年度にfMRIと脳波との同時計測系を構築した。しかし電極によるfMRI画像の欠損が大きいことが判明し、その抑制に取り組んでいる。解析では前年度に少数ROIを用いた解析に取り組んだ。解析の途中でROI数をどの程度まで増やせば生理学的に妥当か検討する必要に気づいた。fMRI研究ではヒトでもマウスでもROI数を柔軟に変更できる標準脳は存在しない。そのためまずROI数を柔軟に変動できるマウス標準脳の構築に取り組んでいる(基盤C)。
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Glia
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10.1002/glia.23454