研究課題
ダイズなどのマメ科作物は窒素栄養を根粒窒素固定に依存しているが、根粒窒素固定のためには多量のリンが必要である。資源枯渇性からみると、限られたリン資源を使って窒素固定に依存したマメ科作物の栽培を行うより、先進国では過剰基調にある窒素を利用してリンの節減を図りつつ、マメ科作物を栽培すること方が、窒素・リンの循環からみてより持続的な農業生産システムにつながる可能性がある。そこで本研究では、逆転の発想で、ダイズについて、窒素肥料依存型+リン肥料節減型栽培(根粒窒素固定非依存型)の可能性について栽培試験を行うとともに、その環境影響を資源枯渇性の面から評価し、資源・環境の両面からダイズの持続的肥料施用法の可能性を探る。本年度は、根粒形成能の異なるダイズ3系統,En-b0-1 (超着生),エンレイ (通常着生),En1282 (非着生) を畑圃場において2段階の土壌リン酸レベル(低P、高P)で栽培した2年間の結果を解析した。高P区に対する低P区の収量低下の程度は、超着生>通常着生であった。窒素固定依存率は通常着生<超着生系統であった。窒素施用した非着生系統の収量は,土壌Pレベルにかかわらず非着生≧通常着生であった。低P区におけるPあたりの乾物生産効率は低P条件では,窒素肥料を施用した非着生>通常着生>超着生系統となった.以上より,リン酸肥沃度の低い圃場では窒素固定を活用するためにリン酸を多く施肥するよりも,固定窒素へ依存せず,リンの利用性が高い非着生系統のような系統を用いて収量を確保する方が有限なリン資源の有効利用の観点から望ましい可能性が示唆された.これら品種の栽培過程における環境負荷を評価するためにインベントリーデータを整理した。
3: やや遅れている
当初計画していた肥料製造にかかわるインベントリデータの収集整理を実施することができなかった。
肥料に係わるインベントリデータの整理を進めるとともに、根粒非着生系統を用いた栽培試験データを収集し、栽培過程に関わるインベントリデータの整理を進める。ダイズ栽培における窒素負荷を推定するために、重窒素肥料標識肥料を用いたダイズ栽培試験を収集し、施肥窒素利用率、肥料窒素流出率についてデータセットを収集する。リン肥料については、資源涸渇による算出国の輸出戦略の変更、アジア地域における農業生産システムの急速な変化に伴う需給関係の変化等を考慮に入れて、資源枯渇リスクについて情報を収集・整理する。その上で、リン肥料について他の鉱物資源について提案されてきた特性化係数を試算し、肥料資源の資源枯渇をもっともよく示す特性化係数を選択し提案する。窒素肥料については、製造段階に用いられる化石燃料の資源枯渇性から、同様の算定を行う。圃場試験成績と文献情報に基づき、窒素固定依存型栽培(慣行栽培)と窒素固定非依存型栽培の栽培シナリオを作成、それに基づいたライフサイクルインベントリを整理する。
学外分担者・内田晋の肥料関係インベントリデータ収集に関わる作業のための物品費の支出が、作業が遅れたため年度内に支出できなかった。
28年度に作業を進めることによって計画通り使用する。
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