研究課題/領域番号 |
15KT0114
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 雅典 東北大学, 農学研究科, 教授 (40355079)
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研究分担者 |
内田 晋 茨城大学, 農学部, 准教授 (30631014)
田島 亮介 東北大学, 農学研究科, 助教 (60530144)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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キーワード | リン / ダイズ / 窒素固定 / LCA / 資源枯渇 / 栽培 |
研究実績の概要 |
ダイズなどのマメ科作物の根粒窒素固定のためには多量のリンが必要である。資源枯渇性からみると、限られたリン資源を使って窒素固定に依存したマメ科作物の栽培を行うより、過剰基調にある窒素を利用してリンの節減を図る方がより持続的な農業生産システムにつながる可能性がある。そこで本研究では、ダイズの窒素肥料依存型+リン肥料節減型栽培(根粒窒素固定非依存型)について、その環境影響を評価し、ダイズの持続的栽培システムの可能性を探ることを目的とする。 根粒着生・通常品種エンレイ(窒素無施肥)と非着生系統En1282(窒素施肥)を低リン肥沃度の黒ボク土圃場においてリン施肥(以下、P)の有無を組み合わせ、2年間、栽培したデータを整理するとともに、通常のダイズ栽培に関わるインベントリーデータを収集し、LIMEにより環境影響を評価した。機能単位を栽培面積として評価すると、地球温暖化、資源消費量の影響領域における環境インパクトの大きさは、非着生品種+P>通常着生品種+P>無Pの非着生品種および通常品種、であった。富栄養化の面では、非着生品種+P>通常着生品種+P≧無P+非着生品種>無P+通常品種、であった。一方、機能単位をダイズ子実収量あたりとして評価すると、地球温暖化、資源消費の影響領域においては、非着生+P>着生+P>非着生+無P>着生+無P、であり、富栄養化の面では、非着生+P>着生+P=非着生+無P>着生+無P、であった。低リン肥沃度の黒ボク土における栽培試験であったのでリン施肥量が多く、結果的にリン施肥の有無が環境インパクトに大きく影響したが、収量的には無P+非着生≧無P+通常品種であったので、栽培条件によっては非着生品種により通常品種よりも環境負荷の小さい栽培が可能と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度は根粒着生・非着生の品種とリン施肥を組み合わせたダイズ栽培試験の生長解析を行い、リン吸収あたりの生産効率が非着生品種の方が高い場合のあることを明らかにした。2016年度は、これらの成績に加え、ダイズ栽培に関わる作業、栽培関係のインベントリデータを収集し、根粒着生の有無とリン施肥を組み合わせたダイズの栽培プロセスにおけるライフサイクル環境影響評価を行い、根粒非着生・窒素施肥によっても、根粒着生・通常品種よりも環境負荷の低い栽培を行える可能性を示唆する結果が得られた。この成果は、エコバランス国際会議において発表した。ほぼ計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2017年度には、地域における余剰窒素を含むダイズ栽培における窒素・リン循環最適化についてシナリオ分析を行う。具体的には、コンポスト生産に関わる事例を収集し、窒素源としてコンポストを利用する場合の環境負荷原単位を推定する。次に、窒素が過剰基調にある地域のコンポストのダイズ栽培への利用を想定したシナリオを作成し、コンポストを利用しない根粒着生通常品種の栽培とコンポストに窒素源を依存する根粒非着生品種の栽培について、環境負荷を比較する。また、リン肥料について、資源枯渇リスク特性化を引き続き検討し、昨年度エコバランス国際会議で発表した内容をブラッシュアップし、論文としてのとりまとめを進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、ダイズ栽培インベントリーデータ収集のための旅費ならびに資料購入への支出を計画していたが、実際の支出は計画を大幅に下回った。また、分担研究者間との調整業務に旅費の支出を計画していたが、メールと電話で調整を行うことができた。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度には、これまでの成果を論文としてまとめるための英文校閲、投稿料等への支出が想定される。また、データ整理に学生アルバイトの援助を得る必要が想定される。そこで、当初予算では不十分であったそれらへの支出に使用し、計画通りの推進に努める。
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