研究課題/領域番号 |
15KT0116
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
橋本 洋平 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80436899)
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研究分担者 |
豊田 剛己 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30262893)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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キーワード | 有機農業 / 亜鉛 / リン |
研究実績の概要 |
肥料価格の高騰や資源循環利用の観点から,家畜ふん堆肥の利用が今後さらに増加することが考えられる.家畜ふん堆肥のなかでも,豚のふん尿を堆肥化した豚ぷん堆肥には,リン(P)・銅(Cu)・亜鉛(Zn)といった元素が高濃度に含まれている.そのため,豚ぷん堆肥を長期にわたって農地に施用し続けることで,これらの元素が土壌中に蓄積し,作物への過剰害,地下水・河川への流出量増加による富栄養化など,農業生産や周辺環境の悪化を引き起こすことが懸念される.本研究では23年間の連用試験土壌について,豚ぷん堆肥の連用が土壌の化学性およびP・Cu・Znの濃度と化学形態を明らかにすることを目的とした. 豚ぷん堆肥の連用は,土壌のpHおよび層状ケイ酸塩鉱物やAl/Fe(水)酸化物の組成を変化させることで,P・Cu・Znの蓄積形態に大きく影響を及ぼした.豚ぷん堆肥の連用によって土壌に蓄積したPの大部分は,無機態(Pi)であり,特にNH4Fによって抽出される形態(土壌中のAlと結合),およびHClによって抽出される形態(Caと結合),連用開始前と比べて1.5-4.5倍に増加した.豚ぷん堆肥の連用は,土壌中のmica様層状ケイ酸塩鉱物,ならびに非晶質のAl/Fe(水)酸化物を増加させたことから,これらの新規に生成した二次鉱物が新たなPの吸着サイトとして寄与している可能性がある.豚ぷん堆肥の連用によって,Znは酢酸によって抽出される形態(層状ケイ酸塩・酸化物と結合)が約4.0-7.8倍に増加した.Znの化学形態は堆肥の施用量によって顕著に異なり,標準量を施用した土壌では層状ケイ酸塩およびAl(水)酸化物に吸着したZn,3倍量を施用した土壌ではZnCO3およびZn3(PO4)2が主要な形態であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
土壌の亜鉛の化学形態が詳細に明らかにされつつあるため.
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今後の研究の推進方策 |
土壌中の水分散性コロイドのリンと亜鉛の濃度や化学形態について検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用する試薬類を効率的に使用することができたため.
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次年度使用額の使用計画 |
学内の共通機器を利用して土壌の元素分析を進めるため,一部はその使用料金に充てる.
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