H29年度は、前年度に引き続き、バイオマスを好気性発酵させ、生成した発酵ガスを植物に直接供給し成長への影響を調査した。カラマツのかんな屑と発酵鶏糞および微生物供給剤VS34を混合し反応器に充填し、40℃で好気性発酵させ、生成した発酵ガスをシロイヌナズナの苗を入れた栽培チャンバーへ供給した。また、対照実験として、CO2濃度約400 ppmの室内空気を供給したチャンバー内でも栽培を行った。 発酵ガスを供給した栽培装置内の2週間の栽培期間の平均CO2濃度は1400 ppmとなり、シロイヌナズナの成長量は対照実験に対して1.4倍となった。さらに、平均CO2濃度が1400 ppmとなるようにガスボンベからCO2を供給して栽培実験を行ったところ、対照実験に対して1.4倍の成長量となった。これより、前述の発酵ガス供給による成長促進は主に発酵により生成したCO2による効果であることが示唆された。 次に、微生物の種類を変え、セルロース分解菌であるTrichoderma属の菌を含む微生物供給剤を使用して発酵実験を行い、1週間経過後にBacillus属の菌種をさらに追加し発酵させ、生成ガスを植物に供給したところ、平均CO2濃度は1400 ppm程度であったが、成長量は対照実験に対して1.8倍に増加した。これより、CO2以外の揮発成分によりさらに成長が促進されたことが示唆された。また、発酵ガス中には、ピネンやアセトフェノンといった植物成長促進効果が報告されている物質が検出され、CO2に加えこれらの物質により植物成長が促進されたと推測された。 木質バイオマスを好気的に発酵させ、生成したガスを植物に供給することにより成長を促進できることが示された。また、その効果は使用する微生物の種類によって異なり、発酵ガス中に含まれるCO2以外の揮発物質による成長促進効果も期待できることが明らかとなった。
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