本研究では、ラダックにおける紛争の形態と歴史的背景、紛争解決戦略について分析した。ラダックの人々は、国際的に認知されたノーベル平和賞受賞者であり、非暴力の象徴であるダライ・ラマ14世を頂点とする、今やグローバル化したチベット仏教との連帯を強化することで国際的支持を味方につけ、カシミールのムスリムとその背後にあるパキスタンに対抗し、さらには中国に対峙しながら、同時にラダック人としての独自の伝統文化とアイデンティティの維持を図ることにより多民族間、多宗教間の共存に向けた倫理的戦略、文化的戦略、制度的戦略という多面的紛争解決戦略を有効に展開していることが明らかにされた。
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