研究課題/領域番号 |
15KT0126
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
中西 淑美 山形大学, 医学部, 准教授 (20420424)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2020-03-31
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キーワード | インフォームド・コンセント / バイオマーカー(唾液アミラーゼ) / 主観的データの心理尺度分析 / 短期精神的ストレス / ストレスコーピング / IC内容のテキスト分析 / 医師のナラティヴ / 患者のナラティヴ |
研究実績の概要 |
平成28年度は、情報収集と試験的事前調査と本格的な研究調査を進めた結果、実際の医療現場におけるインフォームド・コンセント(以下IC)過程を観察しデータ収集をし研究を進めることができた。具体的には、事前に組み込まれた予定手術の人工股関節全置換術の患者と医師を被験者とした。ICの内容による主観的短期精神ストレスの評価として、交感神経活動の指標であるバイオマーカー(唾液アミラーゼ)を用いて測定した。そのため、新たな物品購入としてバイオマーカーの試料チップ購入が増えた。また同時に、緊張や特性不安を見るためにSTAIや満足度にファイススケール、POMS尺度、ストレスコーピング及びインタヴューを実施した。より良い説明と関係性によるICとは何か、入院や手術における短期精神ストレスの動向から調査することができた。まだまだ医師・患者ともにデータが少ないが、現状では以下のことが考察された。患者の場合、ストレスコーピングは個人差があるが、特性不安は入院時が最も高く、手術時はICによる、「受け止め」、「情報の相互交換」、「振り返り」、「自律・意思決定支援」が医師によって行われると、手術時の不安は減じ、満足感も高くなることが明らかになった。 入院・手術の原因である疼痛の有無に関わらず、また、手術後の疼痛が持続しても、ICへの評価は高かった。医師・患者の信頼関係の要はどのようなICが行われるかによって、短期精神的ストレスが減じる可能性があるという仮説の立証へむけての示唆があった。ICの内容のナラティヴ分析では、まず、量的にテキストマイニングデータで分析した結果、少ない発話でも、情報の相互交流が実施されるような共通の言語に特徴がみられた。多くの質と量の主観的データを単独作業で処理するので、研究調査と分析には時間を要することも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
インフォームド・コンセント(以下IC)のテキストマイニング分析と患者満足度について、原著論文として採択された。また、医療メディエーションが交感神経活動を和らげる効果についても短報として採択された。さらに、法学部の学生向けに、リーガルトピックとして原稿を2編書下ろした論文が公刊された。説明と同意については、実際の医療現場での参与観察について、外来から入院・手術・退院までを経時的にデータ採取し、短期精神的ストレスの評価をバイオマーカーで実際調査することができた。これらの研究はすべて外部委員のいる研究倫理委員会の承認を得て実施した。患者さんがICに何を望んでいるかについて、医学教育学会で発表した。以上、今年度は、当初の計画以上に進展している。研究者は、本研究の説明に対し、患者・医師に、ご理解を得られるよう努力し、すべて研究に対する情報開示と説明し、また診療科に対する敬意を尊重しつつ、謙虚に研究を実施していることも影響していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
※今後の研究の推進方策 1)医師・患者ともにデータを増やすこと、2)医師の手術前後の短期精神的ストレスをバイオマーカーを使って計測すること、3)インフォームド・コンセントにおいては、難易度の高い手術(内容・術式・執刀者の担当)による差異があることの調査ができないか検討すること、4)患者の満足度は、説明義務以外の要因がある可能性があるため、今後も分析検討を続けること、以上、4つの観点から、試料などの物品購入、本研究調査は期間延長の可能性も視野に入れて方策を実施する。
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