2019年度は、これまでのさまざまインフォームド・コンセント(以下IC)と説明義務におけるナラティヴについて、3年間のデータや分析のもとに、医療メディエーションという協働意思決定の対話概念と方法論の視点から、 あるべきIC過程の 要因連関モデルと、紛争抑止につながる適正な説明パターンの構造を分析調査した。判例の研究の分析と調査では、医事紛争における民事訴訟判決の判例(1976年から2001年の司法統計では、説明義務違反が60件のうち、説明責任を否定されたものは12件であった。判例分析からはイICに重要なことは、最判平成13年11月27日判決にみられる訴訟上の説明義務のポイントは勿論であるが、説明義務の判断基準の論拠となる①合理的患者基準説②具体的患者基準説③二重基準説のすべての3つにみられるのは、医療行為の違法性の阻却のみならず、実際に医療を受けようとしている具体的な患者にとって必要と思われる情報について、医師が、患者が理解しているかどうかを慎重に判断,確認して説明するように心がける必要性があること、その前提として、その具体的な患者に寄り添うことが出来る受容と共感の協働意思決定の双方向性があることが明確となった。また、訴訟になるケースの多くは、説明義務が医療行為を点で考え線として継続的な患者への説明が不足していた。防御のための説明が目的化するのではなく、ICの主語を患者にすること、説明は医師と患者の理解のための手段をとることが重要である、このことは、医療メディエーション概念による短い時間でのICの対話過程によって、患者と医師の理解度も満足度も評価されていることがテキストマイニング分析で明らかになった。そのことから、救急・臓器移植のICや重症対応メディエーターの教育プログラムを作成し、筑波大学にて試行することができた。
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