最終年度は概ね予定通りに研究を進められ、著書、単著、論文、国際会議や国際ワークショップなどにおける発表と、様々な形で、国内外に多くの研究成果を出せた。日本国内では、実際に政策提言などによって、日本の対外政策に研究の成果で貢献をすることができたし、海外からの反響も大きかった。最終年度は、凍結された紛争の多面的理解のために、未解決の国境・領土問題や、凍結された紛争になることを回避できた事例の継続的な検討に加え、凍結された紛争を生み出したり、より効果的に温存したりする上で利用されてきたロシアのハイブリッド戦争の研究を特に深めた。 また、前年度に続き、アジアでの調査も範囲を広げ、台湾、韓国で調査を行ったり、研究者などと議論を交わしたりして、アジアの事例分析に厚みを持たせることができた。ここで改めて浮き彫りになったのは、凍結された紛争の解決に影を落とす歴史背景および歴史認識問題である。 加えて、凍結された紛争がロシアのグランド・ストラテジーとリンクしていることに注目し、ユーラシアのパワーゲームを中国・ロシアの関係から検討する研究も継続して進めた。今年度は、キルギスを事例に分析を行なったが、地域の紛争・対立に中露のパワーゲームが影響していることがわかり、極めて重要な論点であることを再認識した。 最後に、凍結された紛争を抱える国の内政は、凍結された紛争の存在によって大きな影響を受けている。そのため、凍結された紛争を抱える国の内政についても詳細な分析を行なってきたが、その分析結果は、新型コロナウイルス問題への対応にも応用できることがわかり、今後の研究発展の手応えも感じた。 これらの研究を進める上で、海外の研究所や大学の研究者との研究協力を深めてゆくことができたことも、研究の進展に大きく貢献してくれた。 最終年度も多面的に研究を進めることができ、大きな成果を得られた。
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