研究課題/領域番号 |
15KT0134
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
上杉 勇司 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (20403610)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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キーワード | 平和構築 / 国家建設 |
研究実績の概要 |
西欧的な国家建設(自由主義的な価値観を推進する平和構築)に関する先行研究を収集・整理した。早稲田大学の山田満教授が主催するアジアの紛争予防に関する研究会に出席して、関連するテーマにについて、定期的に議論することができた。また法政大学の藤重博美准教授ら平和構築の実務家を交えた研究会を定期的に実施し、本研究に実務家の視点を盛り込む機会を得た。海外調査としてインドネシア(アチェ)を訪問した。アチェの政治指導者、研究者、市民団体、宗教家、女性団体、住民などとの意見交換や検討会(Focus Group Discussion)を実施した。アチェは和平合意締結から10年の節目の年であり、10年を振り返って、アチェの和平プロセスや平和構築の問題点や現在の課題などを中心に議論することができた。さらには、米国アトランタにて開催されたInternational Studies Associationの年次大会に参加し、本研究と関連する部会(自由主義的平和構築や折衷的平和構築)に出席して、報告者等の専門家と意見を交換した。西欧的な国家建設に対しては、英米を中心に批判的に捉える風潮が高まり、折衷的平和構築の議論が学会においても話題を集めていた。そのような状況下、折衷的平和構築の議論をリードするOliver RichmondやRoger Mac Gintyなどと意見交換するだけでなく、折衷的平和構築論に対して向けられた批判についても学ぶ機会を得た。とりわけ、国連等の外部者が用いてきた西欧的な方法論に対する批判として議論されることが多かった「現地への回帰(turn to local)」に関する課題の検証が、最新の学会における関心事であることを把握できた点が収穫である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおり、先行研究の収集・整理を進めることができた。カンボジアにおいて、学会参加と現地調査を実施する予定であったが、予算の減額に加え、本務との関係で日程調整が難しかったため、実施を見送った。その代わりに、次年度に実施予定であったアチェの現地調査を実施した。アチェの現地調査では、研究協力者のサポートを受け、関係者へのFGDや聞き取り調査を成功裏に終えることができた。それ以外の活動については、特に障害となるべきものや現地情勢の急変もなかったため、計画の変更は必要なく、予定どおり取り組むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
自由主義的平和構築に対する批判として生まれた折衷的平和構築に対して、批判する動きが英米の学会において見られるようになったことを踏まえ、折衷的平和構築に加え、それに対する批判についても、今後は注意を払って研究を進めていく。すでに、アチェにおける現地調査を終えているので、その成果を研究レポート(現地調査報告)として整理し、学術誌等に投稿する。今後は計画どおり、ネパールでの現地調査を実施し、複数の事例を比較の視点を持って考察できるようにしたい。今年度は、日本国際政治学会の60周年記念大会が開催されるので、そこにおいて、研究の途中経過を報告するとともに、海外の学会においても、研究成果を発表して、議論する機会を増やしていく。他方、国内においては定期的に研究会を開催し、国内の研究者および実務家との意見交換を継続させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初に予定していたカンボジアでの学会参加、およびそれに連動させた形でのカンボジアでの現地調査が本務との関係で実施できなかった。その代わりに、次年度に実施予定であったインドネシア(アチェ)への現地調査に切り替えたが、この変更に伴い旅費が当初見積価格よりも低く抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定では、次年度に実施予定であったインドネシア(アチェ)への現地調査を当該年度に実施したため、次年度では現地調査に関しては、当初の予定にあったネパールを予定どおり実施する。次年度使用額については、ネパールの現地調査の費用の一部および海外での学会参加費用に充填する。
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