研究課題/領域番号 |
15KT0134
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
上杉 勇司 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (20403610)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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キーワード | 平和構築 / アジア / 国家建設 |
研究実績の概要 |
今年度は、紛争後の国家建設における西欧的な取り組みと現地社会の受け入れのメカニズムに関する研究を推進した。とりわけ、東ティモール、ネパール、カンボジアにおける治安部門改革と民主化の観点からの研究を進め、現地調査(2016年5月にネパール、2017年3月にカンボジア)も実施した。 また、西欧的なリベラルな平和構築を東ティモールで担ってきた豪州とポルトガルの治安組織(警察および軍関係者)や有識者との意見交換を実施し、西欧的な取り組みを推進してきた側の見解についても聴取することができた。海外での調査結果を論文の形にまとめ、学会において定期的に報告して適宜フィードバックを得ることも試みた。とりわけ海外での学会報告によって、日本国内では得難い専門家層との対話を実現することができたのは、その後の論文の出版に向けて有意義であった。 研究成果については、学会での報告および専門書籍の出版という形につながった。学会報告は、9月のAustralian Political Studies Associationにて一回(英語)、11月のAsia Pacific Conferenceにて一回(英語)、12月の国際安全保障学会(日本語)にて一回の計3回を実施した。そこでの議論を反映させる形で、日本語の専門書として「人間の安全保障」の実現に関連する東南アジアの地域特性」(pp. 16-30)、山田満(編)『東南アジアの紛争予防と「人間の安全保障」:武力紛争、難民、災害、社会的排除への対応と解決に向けて』明石書店(2016年)を発行するとともに、英語の専門書として“Chapter 6: Neo-Authoritarian Peace in Timor-Leste,” in Brendan Howe (ed.), National Security, Statecentricity and Governance in East Asia, Palgrave (forthcoming)への寄稿を終えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に実行できなかったカンボジアへの現地調査を当該年度に実施することができた。カンボジアでは、コミューン選挙を直前に民主化の問題について、選挙管理委員会、選挙監視を担うカンボジアの市民団体、カンボジアの有識者等への聞き取り調査を実施することができた。これまで培ってきたネットワークを活かして、現地調査の実現につなげることができた。さらには、研究分担者として関わっている別の研究事業をつうじて、関係者を招聘した国際研究集会を実施できたことも、本研究を進めて行くうえで有益であった。学期中の海外調査に出かけることが難しいため、休暇を最大限活用する形で現地調査を実施することを心がけた。 現地調査と学会報告をうまく噛み合わせることで、研究を進める上でのマイルストーンとすることができ、かつ休暇を海外調査や学会報告のタイミングに合わせることで、時間のやりくりが難しいなかで研究に十分な時間を確保するように努めた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる次の年度では、これまでの研究の蓄積を成果という形で取りまとめることに力点を置く。英語の専門書として既に寄稿済みのものについては、専門家による査読や編集・校正の過程が残されているため、まずはこちらを優先的に進める。次に、これまでの研究成果を、学会報告、国際研究集会での報告、学術誌への投稿、専門書籍の出版という一連のアウトプットの機会につなげていく。 具体的な目標として、5月には国際安全保障学会の学会雑誌『国際安全保障』に寄稿し、9月に国際研究会を海外からの専門家を招聘して実施して、研究成果の発表・共有の機会とする。さらには、専門書籍として英語で一冊と日本語で一冊を発行するように努める(いずれの書籍においても編者としての役割も果たす)。 上記を実現するうえで、研究分担者として関わる別の研究課題とうまく連動させる形で実施することで相乗効果が生まれるように配慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が順調に進んだことで、その成果を海外の研究者と共有し、フィードバックをもらうことで、より良いものにすべきであると考え、次年度に国際共同研究集会を開催することを計画したため。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年9月17-18日の予定で、国際共同研究集会を早稲田大学にて開催するさいの経費として使用する。その国際共同研究集会には、Salisbury University(米国)の紛争分析・係争解決学部長のS.I.Keethaponcalan教授(スリランカ紛争と和平専門)とGadja Mada University(インドネシア)の平和・紛争解決修士課程のSamsu Rizal Panggabean専任講師(インドネシア紛争と和平専門)を招聘して、折衷的平和構築をテーマとした研究会の実施とその成果の出版に関連する経費に使用する。なお、 Panggabean専任講師には、本研究課題の初年度から海外共同研究者として、インドネシアにアチェ紛争と和平プロセスの現地調査を合同で実施してきている。
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