欧米が主導する折衷的平和構築の分析をアジアの文脈で実施した場合の新たな課題を本研究で明らかにした。現地社会と国際社会の二項対立的な理解を乗り越えて、現地社会と国際社会が各々の内部に抱える多様性を議論した。現地社会のなかにも国際社会が唱導する価値観や制度を積極的に受け入れる集団がいるとともに、国際社会の側にも欧米的価値観に抵抗する集団がいることを示した。 治安部門改革と民主化の課題として表面化した理由の多くが、現地社会の非欧米的価値観が、国際社会が唱導する欧米的価値観や制度の導入を阻んでいるのではなく、実効的中央集権体制の確立と民主主義の実現という国家建設が内包する矛盾にある点を実証した。
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