研究課題
本研究では、政治体制、民族比率の2つの作業仮説を検討することを通じて、資源通過国が紛争当事国となる蓋然性・潜在性について研究してきた。最終年度である平成31年度においては、焦点をあてた新規性の高い紛争研究として、体系化した包括的プラットフォームを形成するべく、研究の成果(2つのモデル)と処方箋を集大成した研究成果として、過年度の各学会報告等における議論をふまえて、法律文化社より『資源地政学』を発刊した。発刊に先立ち、研究分担者、協力者による研究会を開催し、知見の十分な共有を図った。この成果発信を通じて、資源通過国の資源当事者化を回避する斬新な知見を広く世に問うことがかなった。具体的には、「内陸国は、公海の自由及び人類の共同の財産に関する権利を含むこの条約に定める権利の行使のために海への出入りの権利を有する。このため、内陸国は、通過国の領域においてすべての輸送手段による通過の自由を享有する。」(海洋法条約125条)とされ「通過運送に対しては、いかなる関税、租税その他の課徴金も課してはならない」(同127条)に補われる形で、通過の自由は完全なものに見えるにもかかわらず、現実には、内陸国には資源輸送にあたっての桎梏がある。例えば沿岸国において非関税障壁あるいは地方税等が課せられることが多く、同条の内容の実行は、内陸国と沿岸国の二国間合意次第である 。大局的にいえば、1)海軍力不在ゆえの軍事不均衡による同盟の停頓、2)貧弱な接続性に起因する多くの貿易障壁と貿易不均衡が内陸国に見られる。なぜ内陸国は、軍事的にも経済的にも沿岸国に優れないのか。そこには内陸性に起因する限界があるのではないか。これを代表者は「内陸国の罠」と呼ぶ。こうした状況をはじめ世界各地の事例を2つの仮説をもとに分析したものが本書である。
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マテシス・ウニウェルサリス
巻: 21 ページ: 1-30
アジア太平洋討究
巻: 39 ページ: 93-104
巻: 21 ページ: 1-25