研究課題
(1) ラン藻由来のアルカン合成酵素 ADの大域的な構造ゆらぎを理論的に可視化するために、分子動力学シミュレーションを行った。その結果、生成物が排出されるゲートの開閉運動が起きる様子が観測された。また、ゲート開閉運動の蝶番となるような残基を探索し、それらの残基をアラニンやグリシンに置換した変異体を作製して実験をすると、活性が大幅に減少した。このことは、構造揺らぎの制御によって活性(すなわち遷移状態の安定性)を制御しうることを示唆している。(2) ADの大域的な構造ゆらぎを実験的に可視化するために、基質アナログの存在下と非存在下でNMRスペクトルを測定し、緩和測定を行った。その結果、基質アナログの添加によってADの構造揺らぎが変化する様子が観測された。(3) ラン藻由来のアルカン合成関連酵素AARの網羅的なアラニンスキャン変異解析を完了させた(340個の変異体を作製)。その結果、AARの活性を向上もしくは低下させる変異部位が多数同定された。また、AARの基質特異性を変えるアミノ酸置換も多数同定された。これらの結果は今後、活性と基質特異性を変換するための新たな遷移状態制御法を開発する上で有用である。さらに、進化分子工学的手法によって酵素を高活性化させるためのスクリーニング系を構築した。(4) 様々なラン藻種に由来するADのアミノ酸配列を比較し、低活性型ADのアミノ酸配列を高活性型ADの配列に近づけるように多重変異を導入した。その結果、低活性型ADを高活性化することに成功した。このことは、非保存部位への変異によって酵素活性を増大できることを示している。同様の研究をAARについても行った。(5) X線溶液散乱法を用いることにより、AAR単独での立体構造解析と、AARとADの複合体の立体構造解析を進めた。また、ラン藻由来タンパク質の立体構造予測を行った。
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