研究課題/領域番号 |
15KT0145
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
灰野 岳晴 広島大学, 理学研究科, 教授 (80253053)
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研究期間 (年度) |
2015-07-10 – 2018-03-31
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キーワード | 超分子ポリマー / 協同的自己集合 / ナノ構造 |
研究実績の概要 |
分子が自己組織化し分子集合体を形成することで,個々の分子にはない新たな機能を発現することができる。分子集合体の構造は自己組織化過程の遷移状態に依存している。すなわち,自己組織化の遷移状態制御によって分子集合体の構造設計が可能となる。このような機能性分子集合体として,可逆な分子間相互作用によって重合した超分子ポリマーが注目を集めている。しかし,超分子ポリマーには可逆な相互作用によって形成されるために重合反応の制御が難しいという大きな問題点がある。この問題を解決するためには,超分子ポリマーの重合を自在に制御することが必要である。 我々は,イソオキサゾールを含む平面積層分子が分子間相互作用により積層することを見出している。そこで,イソオキサゾール部位と白金錯体部位やチオフェン環,カルバゾール環の縮環した新たな平面芳香族分子を開発した。これらの分子は双極子-双極子相互作用,金属間相互作用,硫黄間相互作用を駆動力に協同的自己集合を示すことを見出した。積層構造において協同的自己集合を支配する因子を詳細に検討したところ,分子の積層構造の形成に伴い双極子モーメントが徐々に大きくなっていることを突き止めた。特に,カルバゾールをもつ集積系では,結晶構造の解析に成功しており,協同的自己集合は分子間の双極子-双極子相互作用の配列により誘導されていることが明らかとなった。また,金属間相互作用は溶媒効果に非常に敏感で,らせん型の集積構造とランダムコイル型の集積構造を溶媒効果により自在に制御できることがわかった。さらに,硫黄のような分極率の高い元素の導入は協同的自己集合の発現に有効で有り,平面積層型の分子であるにもかかわらず非常に強い協同的自己集合に成功した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はこれまで,イソオキサゾールの局所的ダイポールモーメントを駆動力に自己集合する超分子ポリマーを開発してきた。これらを発展させることで,協同的自己集合を実現し,超分子リビングポリマーを開発することを目的としている。概要でも述べたとおり,分子間の双極子-双極子相互作用を制御することで協同的自己集合を達成した。また,これらの自己集合現象が制御可能であることも明らかにした。そこで,超分子リビング重合を実現するため新たな分子系の開発を行っている。現在までの所,我々の開発したイソオキサゾール誘導体が超分子リビング重合に適した集合現象を示すところまで突き止めた。この誘導体の自己集合は濃度や温度に対して非常に敏感で,協同的な会合現象とイソデスミックな会合現象を制御できることもわかってきている。また,リビング重合に特徴的な分子量の揃った集合体の生成を確認している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目的である協同的自己集合を用いた超分子リビング重合反応の開発とその制御の主導原理を見出すことを目的とする。特に,分子間に働く分散力に起因する弱い力の働きが自己集合構造の制御に重要で有り,これらは外的要因に敏感である。そこで,これらを上手く利用することで,自己集合構造の異方的成長を実現し,最終的にはABC型のブロック共重合構造の構築を達成したい。これらの構造は光エネルギーや電気エネルギーの異方的輸送をナノレベルで制御できることから,高度に集積されたデバイス,センサーシステムへの応用を指向することができ,21世紀の分子デバイスの開発に大きく寄与できると考える。
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