研究課題
本研究では、細胞核内の染色体がどのような仕組みで核内空間に配置されているのか、システムとしての「染色体テリトリー」の進化的な創成と核内配置の仕組みに関して、構成的アプローチにより探ることを目指している。具体的には、テナガザル科における「核型高速進化」の現象に着目し、ヒトおよびアジルテナガザル培養細胞を用いて、進化的転座切断部位(Evolutionary Conserved Breakpoints; ECBs)がどのような放射状核内配置を示すかを3D-FISH法により解析した。昨年度までに、36ヶ所(Rバンド、Gバンド由来のものが18ヶ所ずつ)のECBsを選定し、それらの領域に由来するBAC-DNAをプローブとした3D-FISH法により比較検討を行った。その結果、ECBsは特定な放射状核内配置ゾーンに分布するということではなく、核内空間に一様に分布する傾向が見られた。ECBsが核内空間にランダムで一様に分布する場合は、自己組織化・ランダム分布モデル、これに対し、特定の放射状ゾーンにおいて染色体領域間の組み合わせで顕著に転座が生じている場合は、何らかの制御因子が関与することが考えられ、制御因子誘導モデルと呼ぶことができるが、実験結果より、前者の「自己組織化・ランダム分布モデル」が適用されるものと考えられた。また、ヒトとアジルテナガザル細胞核内のECBs全体の分布域を比較すると、アジルテナガザルの方がより核中心に密集して分布する傾向が見られた。さらにECBsのうち、RバンドとGバンド由来の領域の分布を比べると、Rバンド由来の領域がわずかに核中心近くに分布する傾向が見られた。反復配列の放射状核内配置の解析から、FISHシグナルがより強い領域が核中心付近に分布しており、反復配列の増幅が核中心付近で生じている、もしくは核膜周辺部では塩基置換速度が上昇している可能性が考えられた。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
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http://www.esb.soken.ac.jp/research/index.html#hideyuki_tanabe