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2015 年度 実施状況報告書

マクロからミクロへ:トップダウンアプローチによる階層を超える形態形成の理解

研究課題

研究課題/領域番号 15KT0150
研究機関名古屋大学

研究代表者

鈴木 孝幸  名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40451629)

研究期間 (年度) 2015-07-10 – 2018-03-31
キーワード形態形成 / 階層 / レーザー / 変形
研究実績の概要

平成27年度は、まず2光子顕微鏡を用いて肢芽内部の細胞動態のタイムラプス観察をするために、トランスポゼースを用いてヒストン H2B-EGFP を恒常的に発現するベクターを電気穿孔法によりニワトリ胚の予定後肢領域に遺伝子導入した。36 時間後、肢芽が伸長しているステージで肢芽を回収し、器官培養を行いながらオリンパスの2光子顕微鏡 FV1000-MPE を用いて 12 時間タイムラプス撮影を行った。得られたデータを 4 次元動態解析ソフトであるイマリスを用いて核の重心を自動的に識別、トラッキングし1細胞レベルの細胞動態を(X, Y, Z, t)の位置情報として抽出した。次に得られた細胞の位置情報を元に、細胞動態にどのような特徴があるのか細胞動態を定量化後、特徴量を検出した。その結果、肢芽の細胞群は単位時間あたりにゆらぎながら運動しているとともに、遠近軸方向に沿ってお互いの位置を変化させていることが示唆された。
次に、器官全体の形態変化を定量的に解析するためのハンドタイプのペン型405nmレーザーの作成を行った。Rapp OptoElectron 社レーザー照射システム DL405 に光ファイバーを接続し、先 端の 100 μm のガラス管の部分を保護するためにアルミニウム性のシャープペンで覆い内部を固定した装置を構築した。この装置はフットスイッチを踏むことで実体顕微鏡下で405nmの収束した光を光ファイバーの先端から照射することが出来る。実際に光変換型蛍光タンパク質であるKikGRを発現している肢芽に光を当てると光が当たった領域で円形に細胞の色が緑から赤に変換された。これによりKikGRやKaedeを発現している器官の任意の場所の細胞に色を緑から赤に変化させfate mapを作成し、器官全体の形態変化を定量的に解析する手法が肢芽以外の器官でも加速出来ることが期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成28年度に開発する予定であったハンドタイプのペン型405nmレーザーを平成27年度に作成することが出来、研究が早く進められるようになった。しかし円安の影響で405nmのレーザーの値段が上昇したことと、申請していた予算の減額で、KikGRを発現するトランスジェニックニワトリの作成が少し遅れている。また2光子顕微鏡を用いた肢芽内部の細胞動態の解析は、平成27年度に予定していた通りの内容の実験と解析を行うことが出来た。また平成28年度に行う予定の細胞内シグナルに摂動を与えたときの細胞動態の観察も始めており、当初の計画よりも早いスピードで研究が進行している。

今後の研究の推進方策

平成28年度は予算の減額によりトランスジェニックニワトリを作成するための経費が少ないことが考えらる。このためウィルスベクターを利用してKikGRを発現させるためのコンストラクトを作成したので、ニワトリの初期胚にこのウィルスを感染させて遺伝子導入し、ニワトリ胚全身でKikGRを発現する個体を作成してペン型レーザーを利用した器官の形態形成の解析を行いたい。次に肢芽内部の細胞動態がどのシグナルによって規定されているのか調べるためにTet-ONシステムを利用してFGFシグナルを遮断するための変異型FGFR1及びWNTシグナルを阻害するためのDKK3を発現するためのコンストラクトを作成した。これらのプラスミドをニワトリ胚の後肢に電気穿孔法を用いて遺伝子導入し、テトラサイクリン添加をした時にFGFとWNTシグナルを阻害するシステムを構築する。12時間における細胞動態を解析し、平成27年度に取得した野生型のおける肢芽の細胞集団の動態と比較する。特に遠近軸沿った細胞集団の位置の変化に着目する。次に上記の実験で細胞集団の動態に変化が見られたら、そのシグナルをニワトリ胚の肢芽で遮断した時のIn vivoにおける肢芽の形態変化を定量的に解析する。FGFの阻害剤もしくはWNTの阻害タンパク質を吸着させたビーズをニワトリ胚後肢芽に移植し、DiIでその周囲の細胞をラベルする。24時間後に肢芽の形態とDiIの位置の情報を取得し、組織の増殖率と変形率に与える影響を定量的に評価する。これらの結果は、分子と細胞集団の変形をつなぐデータに相当する。またこの実験で肢芽の伸長が阻害された場合、それらのシグナルのIn vivoにおけるシグナル伝達量をFRETプローブを用いて可視化し、遠近軸に沿ってどれだけシグナル強度の勾配があるのか検討する。

次年度使用額が生じた理由

円安の影響で405nmのレーザーの値段が上昇したことと、申請していた予算の減額で、KikGRを発現するトランスジェニックニワトリの作成費が足りず、トランスジェニック作成のための予算323240円を次年度に繰り越し、次年度に改めてトランスジェニックニワトリの作成方法を考えることにした。

次年度使用額の使用計画

次年度のトランスジェニックニワトリ作成と合わせて、どのような方法が最も効率的にトランスジェニックニワトリを作成出来るのか検討する。予算が足りないときは、ウィルスベクターを使用してKikGRをニワトリ胚に感染させて遺伝子導入し、形態変化の解析が出来るようにする。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 1.Quantitative analysis of tissue deformation dynamics reveals three characteristic growth modes and globally-aligned anisotropic tissue deformation during chick limb development.2015

    • 著者名/発表者名
      Morishita Y., Kuroiwa A., Suzuki T.
    • 雑誌名

      Development Growth and Differentiation

      巻: 142 ページ: 1672-1683

    • DOI

      10.1242/dev.109728.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] AP-2β is a transcriptional regulator for determination of digit length in tetrapods.2015

    • 著者名/発表者名
      Seki R, Kitajima K, Matsubara H, Suzuki T, Saito D, Yokoyama H, Tamura K.
    • 雑誌名

      Dev Biol.

      巻: 407 ページ: 75-89

    • DOI

      10.1016/j.ydbio.2015.08.006.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Quantitative approach to understand whole organ deformation dynamics in the chick limb2016

    • 著者名/発表者名
      Takayuki Suzuki
    • 学会等名
      9th International Avian Model systems
    • 発表場所
      台湾
    • 年月日
      2016-03-29 – 2016-03-29
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 脊椎動物における後肢の位置の多様性を生み出す分子メカニズム2015

    • 著者名/発表者名
      鈴木 孝幸
    • 学会等名
      第3回萌える生物学
    • 発表場所
      大阪大学
    • 年月日
      2015-09-21 – 2015-09-21
    • 招待講演
  • [学会発表] 肢芽全体の形態形成の定量的解析方法と位置の多様性を生み出す分子メカニズム2015

    • 著者名/発表者名
      鈴木 孝幸
    • 学会等名
      第5回 Tokyo Vertebrate Morphology Meeting
    • 発表場所
      東京慈恵医科大学
    • 年月日
      2015-08-12 – 2015-08-12
    • 招待講演
  • [備考] Developmental Morphogenesis

    • URL

      http://bunshi5-bio-nagoya-u.businesscatalyst.com/index.html

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公開日: 2017-01-06  

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